判例 譲渡制限株式の買取請求2

福岡高決S63.1.21・判タ662-207

【採用された算定方法】配当還元方式を基礎とし、類似会社比準法と収益還元方式を併用

会社の特徴 鮮魚卸売業、資本金1億7600万円、昭和59年度の売上高は672億円余りで概ね順調な営業成績を挙げている、発行済株式総数35万2000株、従業員数185名、株主数329名、非上場、株式譲渡制限有
株主の特徴 全株式の約3%を保有する元従業員(非支配株主)
その他 会社の取扱う業務内容の将来における収益力の予想、及び本会会社が類似会社と比較して内部留保利益の比率が高く、その分配当の潜在的能力が高いことを加味して評価を修正することは合理性がある

仙台高判S63.2.8・判タ664-199

【採用された算定方法】純資産価額法が妥当であると判示

会社の特徴 発行済株式総数18万株、純資産額約9000万円、株式譲渡制限有
株主の特徴

大阪高決H1.3.28・判タ712-229

【採用された算定方法】ゴードンモデル法

会社の特徴 創業者がある修養団体に魅かれ設立した会社で、その教義に賛同・理解を示す者のみを出資者・従業員として迎え入れることを旨とする、株式譲渡制限有
株主の特徴 非支配株主
その他 会社の経営支配力を有しない買主にとっての株式の評価に当たっては、配当利益が原則的要素となるが、現在及び将来の配当金の決定が多数者の配当政策に偏ってなされるおそれや、配当利益により算出される株価が会社資産の解体価値に満たない場合もありうるので、多数者と少数者の利害を調整して公正を期するため、解体価値に基づき算出される株式価格は株価の最低限を画する意義を有する
会社が収益力を欠く、将来の配当の予測ができない、近く解体が予定されている、協同組合的性質を有するなど特段の事情がある場合には、非支配株主の株式評価に当たっても二次的に会社の資産価値を算定要素として使用・併用すべき場合があるが、本件ではそのような事情はない
収益還元方式については、純利益の中には内部留保として新たな設備投資などにつぎ込まれ、株主に対し直接経済的利益をもたらさないものが含まれている点などに疑問があり、少なくとも配当政策等企業経営を自由になしえない本件のような非支配株主の株価算定には適当でない
国税庁長官通達による類似業種比準方式は、国家と国民の公権力の行使関係を律する基準であって、本件のように、私人間の具体的個別的利害対立下で公正適正な経済的利益を当事者に享受させようとする旧商法204条の2第2項の理念とは異なるうえ、標本会社の公表がなく類似性の検証が不可能であることなどから、本件のような譲渡制限株式の売買価格決定の根拠とすることは適当でない

東京高決H1.5.23・判タ731-220

【採用された算定方法】配当還元法+簿価純資産価額法+収益還元法(6対2対2)

会社の特徴 洋品雑貨の販売業等、代表取締役とその一族が80%の株式を保有する同族会社、業績好調で過去4期は毎期約63億円から約74億円の売上を有し、約5000万円から約2億9000万円の税引後当期利益を上げている。売上高の半分以上を占める紳士用装身具の卸売業界において売上高第1位の地位にある、配当額を抑え収益の相当部分を社内留保してきた、非上場、株式譲渡制限有
株主の特徴 譲渡しようとする者は、対象会社の下請け会社の経営者であり、買受ようとする者らが取得する株式は、併せて総株式の約9%であり、非支配株主となる
その他 本件取得者は、会社の経営支配権を取得できないのであり、配当金を主たる目的とせざるを得ないから、基本的には配当還元法が妥当である
しかし、配当還元方式の採用に当たっては、過去の配当額に依拠せざるを得ないところ、本件会社においては、配当額が低く抑えられてきたことに加え、本件会社のように同族会社的色彩が濃厚で少数者による支配が確立している会社では、配当額の決定は経営担当者や支配株主の経営政策に依拠するところが多く、それ自体不確定要素が強い。一方で、支配株主が全く恣意的に配当額を決めることは許されず、支配株主の意思も不変ではないから、過去の配当額に多くを依拠する配当還元方式のみによることは不十分であり、資産価額方式、配当還元方式をも併用するのが相当である
さらに、本株式数は、別件において売渡を受けた2000株と合わせると少数株主権の全部の行使を可能とするもので、譲受予定者は配当利益のみに関心を抱くものではないことや、対象会社と譲渡を受けようとする者との関係からすると、対象会社の代表取締役が将来において本件株式を取得する可能性が少なくない(過去にも株式を売却した事実がある)などの事情を斟酌すれば、上記の割合による算定が相当である

東京高決H2.6.15・金判853-30

【採用された算定方法】配当還元法+時価純資産法(7対3)

会社の特徴 電気計器並びに測定器の製造販売業、直近1年の純売上高は約14億2500万円、経費を控除した売上利益は約8200万円、登記利益金は約3400万円、従業員100名、株式譲渡制限有、発行済株式数18万4800株
株主の特徴 非支配株主
その他 本件においては、譲渡対象となった株式は、発行済株式総数のわずか0.16%に過ぎず、経営支配権の消長に影響がないから、収益還元方式は採用できない
名目資本と実質資本の乖離が著しい本件においては、簿価純資産方式を採用することは妥当でない
売買当事者が配当のみを期待する一般投資家である本件においては、配当還元方式が最も合理的な算定方法であるが、株式は配当をもたらすものであると同時に、会社の資産を発行済株式総数で除した価値を表象するものであるから、株価算定に当たってこの点を無視することはできない。そして、この株式が会社の資産を化体しているとの観点から株価を算定する場合には、時価純資産方式によるべきであるが、この方式は、会社が継続しているにも関わらず、解散・清算したと仮定して評価するものであるから、これのみで株価を算定することは妥当でなく、配当還元方式の修正要素と考えるべきである

千葉地判H3.9.26・判タ773-246

【採用された算定方法】配当還元法+純資産法(1対1)

会社の特徴 空港関係運送業、最終の貸借対照表上の現存純資産額は約1億4000万円、従業員は約300名、直近3年の売上高は約17億4000万円から約30億5000万円、税込利益は約4300万円から8100万円で増収を続けている、株式譲渡制限有
株主の特徴 譲渡を求めているのは、設立当時からの原始株主で最近まで、会社の専務取締役ないし常務取締役であった者
その他 本件では、貨物運送業の中でも空港関係の運送を業とする点で特殊性があり、類似会社比準法の採用は困難である
本件会社の利益配当率は安定し、年々業績が伸長していることも合わせると将来においても同様の配当を維持できる可能性が高く、配当還元方式に適する場合である。ただし、譲渡株式数が発行済株式総数の10%に当たることから、譲受人において会社役員として経営に参加できる可能性もあり、その場合に得られる役員報酬は株式配当金より相当高額となることを考慮すると、配当のみを期待する一般投資家とやや異なる面があるから、配当還元方式のみによるのは妥当でない。
経営に参加できる可能性はあるとしても、10%では、経営を支配することはできないから収益還元方式は適さない
本件会社においては、過去5年の間に4件の1件あたり3000ないし4000株の株式売買の先例があるが、その売買代金はすべて株式の額面通りの1株500円である。非上場で経営参加も期待できない程度の株式数では、株主は配当に期待するしかなく、額面金額で売買されるのも当然であり、当該代金が会社の実質資本を考慮した上で決定されたのでない以上、適切な取引先例か疑わしいから、取引先例方式は採用しない
純資産価額方式は、買取額は会社の資産状態その他一切の事情を斟酌して決定すべきとする旧商法の規定からしても、買取価格の決定にあたり第一に考慮されるべき方式である
原始株主である譲渡人の所得には、実質上の賃金と役員報酬の双方が含まれていると考えられ、譲受人において、所有株式に基づき取締役の地位を得ることができたと仮定しても、譲渡人と同等の役員報酬を得られるとの保証はないことから、譲渡人の給与所得中4割を役員報酬と推定し、これも配当金の変形であるとみなした
純資産額については、原則として直近の決算期における貸借対照表上の金額によるが、簿価と時価の乖離の著しいことが顕著な土地の価額についての未鑑定によって認められる客観的価値による

札幌高決H17.4.26・判タ1216-272

【採用された算定方法】配当還元法+純資産法+収益還元法(1対1対2)

会社の特徴 酸素ガス製造・その他高圧ガスの製造販売業、資本金8000万円、発行済株式総数16万株、同族会社で当該会社代表者は同族関係者及び別会社を通じて約54.4%の株式を保有、非公開、株式譲渡制限有
株主の特徴 譲渡対象となったのは、発行済株式総数の6%(非支配・少数株主)、会社は買受人と指定
その他 売手の立場からは、株式売買は売手がこれまで顕在的に行使していた利益配当請求権と潜在的に有している残余財産配当請求権を換価する側面があることから、売手にとって最も合理的は評価方式は、配当方式と純資産方式の併用であり、両方式に差をつける根拠はないから、その平均値とするのが相当である。他方、買手の立場からは、本件の買手は会社自身であり自己株式の取得となることからすれば、配当を期待するものではないから配当方式を採用することも相当ではない。そこで、継続企業の動的価値を現すもっとも理論的な方法は、収益方式であり、買手からはこの方式を用いて算定するのが合理的である。以上の売手と買手の立場を総合的に勘案するため、双方の立場が対等であることを前提として、双方にとって相当な評価方式を1対1で評価価格に反映させるのが相当である