判例 第三者割当

大阪地岸和田支判S47.4.19・判時691-74

【採用された算定方法】配当還元法

会社の特徴 毛布製造販売業者、業務のうち約81%が卸売業、19%が毛紡織業、直近の売上高は約27億円、営業利益は約8300万円、発行済株式総数10万株、同族的性格あり、非上場
株主の特徴 引受人は中小企業投資育成会社で支配権行使を禁じられている(非支配株主)
その他 収益還元方式は、収益力が必ずしも1株当たりの株式の収益力を意味しないから非支配株主によって所有される株式の評価には不適当である
会社が10年後の株式公開を目標としていても、10年後の結果は現在の株価にほとんど影響がないから、現に株式を公開している会社の配当性向の平均値を基準とすべきではない

大阪地堺支S48.11.29・判タ304-249

【採用された算定方法】配当還元法+類似会社比準法

会社の特徴 主たる営業は染色加工業、会社更生手続中、非上場
株主の特徴 新株発行に反対する非支配株主
その他 配当還元方式は、将来の配当の平均水準が、最近の過去における配当実績とほとんど変わらないであろうという想定を基礎としており、本件のように今期まで更生手続中で、時期から配当できるようになった本件では妥当しない
純資産方式は営業継続会社においては、持分は観念的な存在にとどまるから、適用ケースは、小規模会社化解散直前会社に限られる

佐賀地決S51.4.30・判時827-107

【採用された算定方法】純資産法を重視

会社の特徴 液化石油ガスの充填・販売業、資産総額約4.3億、負債総額約3.7億、協同組合を前身としており、株主の多くは協同組合当時の組合員でその他の最大株主でも1800株を所有するのみ、経営状態は比較的良好で、過去2年の平均配当率は13.5%、発行済株式総数8万株、非上場
株主の特徴 引受人は新株発行により総株式の4分の1を取得する会社で、非常勤取締役及び監査役を1名づつ派遣予定
その他 「特に有利なる発行価額」については、新株発行決議当時の企業の有する客観的価値をもって形成される株式評価額が基準となる
新株発行が、訴外会社の資本参加を目的としていること、会社が協同組合的性質を有し、株主の大部分は会社の顧客であること、債務者と同種・同規模の上場会社も存在なく、比準方式により得ないことから、旧株主保護のため純資産法を基礎とする

神戸地判S51.6.18・判時843-107

【採用された算定方法】類似会社比準法

会社の特徴 繊維工業品の製造業、純資産約129億円、月商約12億円、当期利益金約3000万円、非上場である(本件新株発行の約14年前に上場廃止)が、当時、いわゆる「店頭気配相場」あり、発行済株式総数360万株
株主の特徴 取締役の解任を求める非支配株主ら2名(ともに約30万株を保有)
その他 本件のように大規模かつ店頭気配相場もある歴史の古い会社について純資産価額方式をとることは不合理が大きい
本件のような歴史の古い大企業において、純資産や収益を全く捨象する配当還元方式は取り得ない
本件では、株価決定の大きな3要素(支配、投資、投機)を加味している類似会社比準方式が適している

東京地決S52.8.30・金判533-22

【採用された算定方法】詳細不明

会社の特徴 自動車並びに各種内燃機関整備用機械工具、自動車部品の製作・販売及び輸出入、資本金5000万円、発行済株式総数100万株
株主の特徴 非支配株主
その他 公正発行価額の適否は、発行価額決定時における旧株の株価を基準として、これに新株発行に伴う諸要因を加味する
本件新株発行の約1年前から、業績が急激に悪化し、業績が好転した事情がないことを価格決定にあたって考慮

東京地判S56.6.12・判タ453-161

【採用された算定方法】純資産法を基礎にして修正

会社の特徴 増資直前の純資産額は約1.5億、発行済株式総数20万株、当時欠損、無配で経営は思わしくなかった、株式譲渡制限有
株主の特徴 支配株主
その他 本件では、名義株があり、実質的には株主は4名で固定しており、取締役にはこの4名の中から3名が付いていたことから、個人企業にも似て実際上株式は会社財産を化体したものとの認識が株主の間に強く働いているとみても不合理とはいえず、純資産法を採用することは実態に即している
本件では、株主は単に配当受領の権利を有するだけでなく、現実に会社の経営面に関与しうる立場にあったのだから、配当還元方式は妥当ではない
会社の当時の経営状況(利益及び配当の状況)が悪ければ、これらの事情を斟酌して減額修正する必要がある
換価可能性の程度も株価にかなりの影響を持つから、株式の流通性も減額修正要素として考慮する必要がある

東京地判H6.3.28・判タ872-276

【採用された算定方法】ゴードンモデル法

会社の特徴 ラジオ放送事業、平成5年3月期売上げは412億円で民放ラジオ業界では昭和40年以来第1位、業績は好調で最近は1株60円(額面の12%)の配当を継続、発行済株式総数100万株、株主279名、非上場、株式譲渡制限有
株主の特徴 支配株主
その他 類似会社比準法を採用するには、少なくとも業種・規模等基本的な点がほぼ同種で大きな差がないことが必要であるが、ラジオ単営の本件会社とテレビ単営あるいはテレビ・ラジオ兼営の会社では同種といいうるか疑問である
親会社と子会社は別個の法人格を有しており、子会社の資産・収益がすべて親会社の資産・収益になるものではないし、親会社が子会社の全株式を保有する場合でなければ、子会社の利益を度外視して、自己の利益のために親会社が子会社を支配することも困難である。まして、本件では子会社(フジテレビ)は親会社の7倍の売上げを誇っているから、子会社の資産・利益を親会社のそれと同視することには問題があり、子会社を含めた企業集団としてとらえた上で類似会社比準方式を採用することもできない
近い将来上場の可能性があることは否定しがたいとしても、上場の意思表明も具体的手続も行っていない現時点では、直ちに上場公開を前提として株価算定を行うことは必ずしも妥当ではない
本件のように、類似会社が存在せず、非上場だが概ね順調な業績を続け安定した配当を行っている大規模会社の非支配株に関する価額算定方式としては、ゴードンモデル法は、株主が現実に期待しうる利益を理論的に算定するものとして相対的な適切さを肯定すべき