M&Aは、Mergers and Acquisitions の略です。

Mergers とは合併、Acquisitions とは買収を意味します。日本では、合併というと良好関係にある2社が企業を一つにまとめるものであり、買収というと圧倒的な力を持っている会社が興味のある会社を手中に収めるというイメージがあるのではないでしょうか。

確かに日本でも、2000年以降敵対的買収が頻繁に行われるようになり、2007年の会社法改正により三角合併が解禁され、外国企業による日本の企業の買収が容易になり、多くの上場企業において敵対的買収に対する防衛策が導入されるということもありました。しかし、敵対的買収は、買収そのものが失敗に終わることが圧倒的に多く(上場企業を対象としたTOBの手法により買収に成功した例は,近年では1件しかありません。)、仮に買収に成功しても期待していたシナジー効果が現れないという認識が定着しつつあります。

そして、日本で行われる買収の大半が両当事者の合意に基づいて行われる友好的な買収で、日本のM&Aの7割を占めると言われている中小企業における買収ではほぼ全てが友好的になされると言って過言ではありません。

以上のように、日本では、買収といっても友好的になされるものが多く、言葉のイメージとはかけ離れているというのが現実です。

M&A はどのような企業においておこなわれるのでしょうか。

日本のM&Aの3割は大企業同士で行われ、7割は中小企業を対象としたものと言われています。ここには、中小企業同士のM&Aと大企業と中小企業とのM&Aが含まれます。みなさんの中には、M&Aは大企業同士のものであり、中小企業には全く関係ないと思われている方も多いかも知れません。しかし、日本のM&Aの7割が中小企業同士あるいは、大企業による中小企業を対象としたM&A なのです。

それでは、M&A はどのような目的で行われるのでしょうか。M&A を行う目的は大企業同士で行われるものと中小企業が対象となるものとの間で異なります。

大企業同士のM&Aの目的には,次のような目的があります。

  1. 国際的な競争力をつけるための合従連衡
  2. 国内市場における競争力強化のための経営統合
  3. 民事再生手続を用いた事業譲渡

1. 国際的な競争力をつけるための合従連衡

近年、自動車業界や鉄鋼業界においては国際的な競争が激化しており、国際的な企業再編が進んでいます。そして,かつて13行あった都市銀行は4行に集約され、大手商社においても特定の事業部門を競業他社と統合するということが行われてきました。また、新薬開発に莫大な費用が必要になる製薬会社においても国際競争力をつけるための合従連衡が行われてきました。

2. 国内市場における競争力強化のための経営統合

国内市場での生き残りをかけ、あらゆる業界で合併や持株会社方式を利用した業界内集約が進んでいます。総合スーパーの業界や食品業界では事実上2社体制となり、百貨店業界においても4大グループに集約されました。また、ドラッグストアやホームセンター、電器小売業界においても集約が進んでいます。

3. 民事再生手続を用いた事業譲渡

民事再生手続では,過大な債務を支払い可能な金額まで減額し、これを最長10年間で分割して債務者会社を再生するという方法が本来的な手続です。ところが、民事再生手続に入り、有用な事業のみを譲渡するプリパッケージ型の事業譲渡や、100%減資を行った上でスポンサー企業が資本投入を行う等の方法でM&Aが行わることもあります。

中小企業同士あるいは大企業と中小企業とのM&Aは、事業を譲り渡す側と事業を譲り受ける側で事情が異なります。

中小企業において事業の譲渡しを検討する動機は主に以下の二つです。

  1. 後継者がいない
  2. 事業の将来性に対する不安

1. 後継者問題

事業は、従業員、取引先、金融機関、株主をはじめとする様々な利害関係を有する者によって成り立っており、事業を経営する者としては、これらの利害関係者に対して永続的に責任を果たすことを前提とした経営が必要になります。しかし、一人の経営者による事業継続には自ずと限界があり、次の者に事業を引継がなければならない時が必ず訪れます。

経営者が事業を引継ぐ者として最初に候補に挙げるのが、身内の方や右腕となって働いてくれている信用ある従業員でないでしょうか。
しかし、そもそも子供がいない、あるいは嫁いでしまっている、子供が専門職に就いていたり大企業で勤務しているため経営に全く関与したことがない。社内に身内がいるものの能力的に不安がある等の理由で、身内に事業を引継がせることができないということがあります。

また、信頼に足る従業員がいたとしても、経営者としては未だ成熟できていない。事業を引継ぐにあたり資金を捻出することができない。個人保証を差入れるまでの決心ができない。個人保証を入れることに家族の同意が得られない。従業員に事業を承継しても現経営者の個人保証を解除してくれない等の理由で、従業員に事業を引継がせることができないこともあります。

2. 事業の将来性に対する不安

仮に、身内の方や従業員の中に事業を引継いでくれる方がいたとしても、事業の将来性に不安がある業種のため、事業を引継がせることにためらいがあるという場合もあります。

他方、中小企業の事業を譲り受けたいと考える動機は主に以下の四つです。

  1. 大企業による売上増加
  2. 上場基準を満たすための補強
  3. 本業の強化・拡大
  4. 新たな事業分野への進出

1. 大企業による売上増加

株式を上場することで獲得した資金調達力を生かし、あるいは潤沢な資金を利用してさらなる発展を目指す企業がたくさん存在します。特に上場直後の企業は、上場により得た資金調達能力を生かし、M&Aによりさらなる発展を目指す傾向があります。資金調達力を生かしたいと考えている企業や潤沢な資金を持て余している企業は、M&Aを行う対象を常に探しているような状況です。

中小企業経営者の多くの方は、大企業がM&Aの対象として中小企業を検討することなどないと誤解されています。しかし、大企業は、国際的な競争力をつけるための合従連衡や生き残りをかけた国内市場における競争力強化のための経営統合というドラスティックな場面以外では、中小企業を取り込んで売上の増加等を図りたいと考えているのです。

2. 上場基準を満たすための補強

上場を目指す企業が上場準備を行っていたところ、上場基準に満たない部分が判明するということはよくあることです。上場を目指す企業は、時間をかけずに上場基準を満たす方策としてM&Aを利用します。

3. 本業の強化・拡大

本業の強化・拡大は、どの企業でも共通の課題であり、このことを考えない経営者はいないと言っても過言ではありません。ただし、自社で一から拠点を作り取引先を開拓するには時間や労力が必要になり、リスクも伴います。ところが、特定の地域で既に企業を譲り受けることができれば、拠点を作る時間や労力を省くことができる上に安全です。そこで、本業の強化・拡大を実行しようとする企業がM&Aを積極的に利用するのです。

4. 新たな事業分野への進出

企業としての成長やリスク分散を行うため事業の多角化を進める企業や、業界内の競争激化により事業規模の拡大を図る企業があります。このような企業では、事業の多角や事業規模の拡大の方法として、M&Aを利用します。

中小企業同士,あるいは中小企業を対象としたM&Aを行う目的は先に説明したとおり事業の譲り渡し側と譲り受け側とは事情が異なります。これらの事情を見て頂ければ理解できると思うのですが、譲り受け側の事情は積極的に表明していくことができる事情ですが、譲り渡し側の事情は対外的に公表できない、あるいは公表していくことにためらいを覚えるという事情です。この結果、M&Aの世界では、事業の譲り受けを希望する企業が圧倒的に多く、それに沿った事業の譲渡を申出る企業が少ないという状況が続いています。

事業を承継してくれる身内や従業員がいないという理由で、後継者問題を抱えている中小企業は50%にのぼると言われています。それにもかかわらず、後継者問題を契機としたM&Aの件数が低調な理由は、経営者が後継者問題を安心して相談することができないからです。

後継者問題は、一人で悩んでいても何一つ解決せず、徒に時間が経過するだけです。当社は、経営者が安心して後継者問題について相談をすることができる機会を提供します。

事業譲り受け側のM&Aのメリットは、大企業による売上増加、上場基準を満たすための補強、本業の強化・拡大、新たな事業分野への進出の目的を達成するため、時間をかけず安全に行うことができる点にあります。

他方、事業譲り渡し側のM&Aのメリットは、創業者利益の確保、譲渡する事業が備える無形資産等の保護、事業を譲り渡す側企業の体質を強化することができる点にあります。

1. 創業者利益の確保

創業者利益を実現する方法としては、事業の譲渡、株式公開、廃業・清算のいずれかしかありません。 株式公開は、厳しい上場基準をクリアーする必要があり、内部統制システム構築や上場を維持するにあたり多額の費用が必要になります。また、近時のような不景気な状況では、株式公開にあたって株式を引受けてくれる者を確保できるかという問題もあります。

廃業・清算においては、資産の処分価格が低く抑えられる上に、事業継続によってはじめて価値を持ちえる資産については一切評価されません。また、資産処分時と株主への配当時にそれぞれ課税されるため税負担額が嵩みます。この結果、創業者が受取れる利益が大きく低減されます。

事業の譲渡は、事業が継続することを前提にその資産価値を評価される上に、事業譲渡時に課税されるのみであるため、廃業による清算と比較して遙かに大きな利益を確保することができるのです。

2. 譲渡する事業が備える無形資産等の保護

廃業・清算では、長年にわたり築き上げてきた商圏・技術・ノウハウが全て無に帰してしまいます。また、従業員は職を失い、取引先も新たな取引先を探し出さなければならないことにもなります。 事業の譲渡を行えば、商圏・技術・ノウハウを保護することができる上に、従業員や取引先に重大な影響を与えることもありません。

3. 事業を譲り渡す側企業の体質強化

主力事業に経営資源を集中させることができる上に、非主力事業の売却で得た利益を主力事業に投入することで、事業を譲り渡す側の企業の体質強化を図ることができます。 また、上場企業等の経営資源が豊富にある企業に事業を譲り渡すことで、資金を豊富に投入し、販路の拡大や社内体制の整備等も行うことができ、譲り渡した事業そのものの体質強化を図ることもできます。

M&Aを行うにあたり譲り渡し側の一番の関心事は,譲渡にともなって支払われる対価です。
事業の譲渡にともなって支払われる対価については株主価値の評価の項目で説明します。
ここでは,M&Aを行うにあたり譲り渡し側が気になる代表者の処遇,個人保証や個人資産に設定された担保権の処理,従業員の処遇や会社名の取扱いについて説明します。

1.代表者の処遇

M&Aにより企業そのものを譲渡しますと,当該企業の経営権が譲り受け企業に移るため,譲り渡し側企業の代表取締役は退任し,譲り受け企業から派遣される新たな役員が就任することになるのが一般的です。 ただし,経営権が移った後であっても事業の承継が円滑に進むように,譲り渡し側の代表取締役が代表権のない会長・相談役・顧問という立場で,事業の承継が完了するまで会社に留まるということもあります。また,上場企業によるM&Aでは,譲り渡し側の代表取締役が代表者の地位に留まるという例もあります。

2.個人保証・個人資産に設定された担保権の処理

中小企業においては,代表取締役が金融機関に対する負債の連帯保証人になっていたり,個人資産に抵当権や質権を設定しています。 M&Aにより企業そのものを譲渡する場合には,このような連帯保証や個人資産に設定された担保権を解除し,譲り受け側の企業が上場企業である場合には,新たに連帯保証や担保権の設定を求めませんし,譲り受け側の企業が中小企業の場合には,新たな経営者において連帯保証を行い,個人資産に担保権を設定するのが一般的です。 しかし,譲り受け側企業の経営者の信用力が十分でない場合には,M&A後にも連帯保証や個人資産に設定されている担保権を解除してくれない場合があります。 したがって,譲り受け側の企業を選定するにあたっては,自身の連帯保証や個人資産に設定された担保権の解除が得られるような信用力のある企業か否かを確認しておく必要があります。

3.従業員の処遇

事業価値を損なわずにM&Aを実施するためには,従業員の士気を低下させずに事業を譲り渡す必要があります。このため,従業員についても全員引き継がれ,雇用条件も維持されるのが一般的です。

4.会社名

従業員や取引先の間で無用な混乱を生じさせないために譲り渡し側の会社名が承継されるのが一般的です。 しかし,譲り受け側の企業にブランド力があり,そのブランド力を利用した方が譲渡の対象となった事業の強化につながるような場合には,譲り受け側企業のグループ企業であることを会社名に入れる場合もあります。

1.M&Aの本質に対する理解

M&Aは,映画やテレビで見るような売買差益を得るようなマネーゲームではありません。 事業を創り育ててきた経営者の事業に対する思いを理解した上で,その思いを尊重しなければM&Aそのものが成立しませんし,M&A後に事業が劣化することもあります。 そして,譲渡される事業で働いている従業員やその家族に対する配慮もなければ事業の価値が大きく損なわれる可能性があります。 また,譲り受け側にとって,M&Aは事業戦略の一貫として行われます。 M&Aが成功するか否かは,譲り受ける事業が譲り受け側企業の事業戦略にマッチしているか否かによります。 M&Aを成功させるためには,譲り受け側企業の事業戦略を理解し,譲渡の対象となる事業がそれにマッチしているか否かを判断する能力が必要になるのです。

2.スキーム構築力

M&Aには,M&Aの手法の項目で説明するとおり様々な手法があります。こ れらの手法においていかなる手法を採用するかは,M&A後の事業形態やM&Aを行う当事会社の資本政策によって決定されます。 M&Aを成功させるためには,M&A後の事業形態や当事会社の資本政策を構築して最善のM&A手法を選択し,計画を立案しなければなりません。 これには,会社法,金融商品取引法をはじめとした様々な法律,会計,経営等に関する専門的な知識や,企画立案力が必要となるのです。

3.調整能力

M&Aでは,非常に多くの利害関係者が存在します。 両当事会社とも,役員,株主,従業員,取引先,金融機関等の利害関係者がおり,これらの利害関係者の利害調整が必要になります。 また,譲り渡し側会社においては,オーナー社長やその家族,オーナー社長が長年付き合ってきた顧問税理士等との調整が必要になります。 他方,譲り受け側会社においては,M&Aを担当することになる役員と事業担当部署を統括する社員との調整,取締役会,弁護士,監査法人との調整も必要になります。 法的な利害関係人だけでなく,事実上の利害関係人を含めた多くの利害関係者との調整を怠ると,M&Aの計画を立て,いざ実行しようとしたときに反対意見が飛び出したために計画が頓挫するということもあります。

4.マッチング力

M&Aは,これを行う当事者が存在してはじめて成立するものです。 事業を譲渡したいと思ってもそれを譲り受けたいという企業が存在しなければM&Aは成立しませんし,事業を譲り受けたいと考えている企業があったとしても譲渡したいと考えている企業が現れなければM&Aは成立しません。 M&Aの目的の項目で説明したように,譲り渡し側の企業が譲渡しを検討する事情というものは,対外的にかつ大々的に公表する内容ではありません。 この結果,現在のM&A市場では,譲り受けを希望する企業は多く存在しても,それにマッチした譲り渡し側の企業が現れないという構造となっています。 このようなM&A市場において,M&Aをマッチングする力というものが非常に重要になるのです。
当社が提供するM&A支援サービスは4つのフェーズから構成されます。

フェーズ1(P1)

M&Aに関する個別相談
当社による説明

フェーズ2(P2)

当社とM&A支援契約を締結
譲り渡しの対象となる事業や企業の情報提供
弁護士及び会計士によるデューデリジェンス

必要に応じて中小企業診断士等の経営コンサルタントや税理士によるデューデリジェンスを実施
高度に秘密性を要する場合については,デューデリジェンスをフェーズ3において実施することもあります。
デューデリジェンス結果報告書の提出
事業の価値の提示
デューデリジェンスを実施しなかった場合については,概算の提示ということになります。
M&Aスキームの提案

フェーズ3(P3)

当事会社を選定・提案
当社と秘密保持契約の締結
ノンネームシートの提示(会社名は開示しません。)
会社名の開示及び譲受け希望会社による現地見学
両当事会社による契約交渉
両当事会社による基本合意書の締結

フェーズ4(P4)

契約内容の最終調整
従業員や取引先等への公表の時期・方法の検討
最終契約書の締結
契約の実行
公表

個別相談

当社にお越しいただいてご相談に応じます。 なお,お電話,メールによる相談もお受けします。 ご相談の内容はもちろんのこと,ご相談に応じている事実について秘密を厳守します。

個別説明

相談・疑問にお応えします (相談例) M&Aの進め方等M&Aに関する一切の事項 売却可能性 M&A後の処遇

M&A支援サービス契約締結

当社の支援サービスの内容,その対価についてご了解いただき,M&A支援サービス契約を締結していただきます。

情報提供

譲り渡し希望会社の概要を把握するための情報等をご提供いただきます。 M&A時に必要な定量的,定性的情報をいただき,当社で整理していきます。 ご提供頂く資料は以下のものです(ご提供頂く資料一覧書をお渡し,ご用意いただくことになります)
  • 決算書
  • 取引先情報
  • 業界情報
  • 業務フロー
  • キーマン情報
  • 強み/弱み
  • 事業計画
  • 含み損益
  • その他

弁護士や会計士によるデューデリジェンス

デューデリジェンスとは企業精査のことです。 会計士によるデューデリジェンスにより事業価値のベースを算定し,弁護士によるデューデリジェンスにより事業価値を修正していきます。 弁護士によるデューデリジェンスにより発見されたリーガルリスクについては,適切なリーガル処理を行うことで改善することが可能です。リーガルリスクは,事業価値を減額する要素になるため,これを改善することで企業価値を増幅することができます。 ただし,秘密性の高い事案においては,この段階でデューデリジェンスを実施せず,基本合意書を取り交わした後に実施することになります。

報告書の作成・提出

報告書に基づき算定した企業の売却価額の目安をご確認いただきます。 デューデリジェンスを実施しない場合の売却価格の目安は,概算のものとならざるを得ず,その後のデューデリジェンスにより大きく価格が変動することがあります。

スキームの提案

譲り渡し企業にとって最適のM&Aスキームを提案します。

相手会社の提案

シナジー効果が見込める買い手候補先をご提示させていただきます。 複数の買い手候補先が存在する場合には,打診可能先及び打診の優先順位に関する判断をいただきます。

企業概要書の作成・提示

当社において買い手候補とコンタクトを取り,企業概要書を提示させていただきます。 なお,この時点では,譲り渡し側会社の社名を開示することはありません。 また,当社による買い手候補への打診状況については,随時ご報告させていただきます。

デューデリジェンス結果報告書の開示

譲り渡し希望会社に関心を示した場合には,買い手候補と秘密保持契約を締結して会社名を開示し,デューデリジェンス結果報告書を開示して行きます。 なお,コンタクト状況や反応は随時ご報告します。

買い手候補との質疑

  当社において,譲り受け希望会社からの質疑に対応します。なお,譲り受け希望会社のM&Aに対する考え方などのフィードバックも行います。

契約交渉

譲り渡し希望会社と譲り受け希望会社との面談機会を設定致します。 面談を重ねる中で契約の基本事項を決定していきます。

譲り受け希望会社の社内決定

譲り受け希望会社においてM&A実行の決定がなされた後,譲渡の条件を調整していきます。 このとき決定していく事項は以下のものです。
  • 譲渡価額
  • オーナ?の処遇・引継ぎの要否
  • 表明と保証
  • 損害賠償
  • 金融機関への保証債務の取扱
  • 従業員の処遇
  • 対外的な開示方法
  • 買主監査方法等

基本合意書の締結

交渉の調整を反映させた基本合意案を立案し,調整を図ります。 譲り受け会社が上場企業の場合には適時開示についても助言いたします。

価格調整

譲渡対価について最終的な詰めを行います。 その上でM&A実行当事者の最終的な意思確認を行います。

ディスクローズ方法の検討

従業員,取引先,金融機関等へのディスクローズシナリオを作成・提案します。

契約条件の決定

基本合意で先延ばしにしていた事項,その他細目に関して譲り渡し会社と譲受け会社との調整をします。

買収希望企業と契約の締結

契約の調印式の企画・進行を行います。

契約の実行

契約条件の履行/対価の受渡し。 株券,重要物品の受渡しの方法,対価の支払方法等について助言いたします。 新代表取締役の選任

公表

役員変更に必要な取締役会・株主総会についての準備を行い,社員へのディスクローズを助言し,立ち会います。

総論

M&Aにおいていかなる手法を採用するかは,M&A後の事業形態やM&Aを行う当事会社の資本政策によって決定されます。 M&Aを成功させるためには,M&A後の事業形態や当事会社の資本政策を構築して最善のM&A手法を選択し,計画を立案しなければなりません。 これには,会社法,金融商品取引法をはじめとした様々な法律,会計,経営等に関する専門的な知識や,企画立案力が必要となります。 M&Aの手法としては以下のものがあります。
  • 株式譲渡
  • 合併
  • 事業譲渡
  • 会社分割
  • 第三者割当増資
  • 株式交換
  • 株式移転
  • 株式の公開買付等

株式譲渡

6_kabushiki_jyouto.jpg 中小企業において多く用いられるM&Aの手法の1つが株式譲渡です。

株式譲渡により,対象会社が発行する株式を取得し,対象会社の支配権を取得します。
中小企業間における株式譲渡によるM&Aの場合,少数株主とのトラブルの回避や機動的な経営実現のために,100%株式取得による完全買収をすることが一般的です。

株式譲渡のメリットとしては,手続が簡便なことが挙げられます。
また,対象会社の株主に変化があるのみで,対象会社自身について変化が生じるものではないので,原則として契約の相手方である取引先からの承諾や行政上の許認可を得る手間がかかりません。

しかしながら,原始株主から現在の株主に至るまで,株主名簿等の客観的な資料による紐付けができない場合,100%の株式が譲渡されていない可能性があり,このとき,会社を完全買収することができないというリスクがあります。

合併

7_gappei.jpg 合併とは,2つ以上の会社が契約により1つの会社になることをいいます。 会社法上,会社の合併は,吸収合併新設合併の2種類に分けられます。

吸収合併とは,会社が他の会社とする合併であって,合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます。

新設合併とは,2以上の会社がする合併であって,合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいいます。

経済的には対等合併であっても,法的には吸収合併の方法が採られ,新設合併が採られることはほとんどありません。
その理由は,吸収合併と異なり,新設合併の場合には当時会社の全てが解散するため,諸官庁の許認可,財産権の移転登記,各種登録,新株発行手続をすべての会社で新たにやり直さなければならないため,非常に煩雑であるからです。

合併のメリットとしては,まず,規模拡大によるスケールメリットやシナジー効果を得られるということが挙げられます。企業文化・社内体制やシステム等の統合がスムーズにいけば,経営の効率化が図れるので,統合のメリットが十分に享受できることになります。

また,事業譲渡と異なり,個別の資産等の移転手続が不要です。
この点で,合併は手続として効率的であるというメリットがあります。

さらに,買い手にとってはキャッシュを要せずに行うこともできることから,買い手の資金負担を抑えることができます。

一方,合併のデメリットとしては,「合併病」と言われるように,組織・構造の変革や従業員の融和に失敗し,かえって経営の非効率化を招くこともあります。

事業譲渡

8_jigyou_jyouto.jpg 事業譲渡とは,ある事業に関する「事業財産」を第三者に譲渡することです。 判例では,「一定の営業目的のため組織化され,有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を譲渡し,これによって,譲渡会社がその財産によって営んでいた営業活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ,譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法25条(会社法21条)に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう」とされています。

事業財産には,土地,建物,什器などの有形資産だけでなく,従業員,取引先等の無形資産を含みます。

事業譲渡は,合併のように売り手が買い手のすべてを包括的に買収することを望まず,一部の事業部門や一部の資産・負債のみを買収したい場合に選択されます。

事業譲渡のメリットとしては,買い手にとって欲しい事業,欲しい資産・負債のみを選択して譲り受けることができるということが挙げられます。
引き継ぐ資産・負債を契約に定めた上で譲り受けるため,簿外債務を引き受けるリスクが低く,また,事業財産を直接買い手もしくはその関連会社が取り込むため,企業規模が拡大しスケールメリットも得られます。

また,売り手にとっては,売却代金が直接入ってくるため,債権者への弁済原資に充てることができます,

一方,事業譲渡のデメリットとしては,合併と異なり,個別の資産や契約毎に移転手続を行わなければならず,手続として極めて煩雑である点が挙げられます。
特に,事業の許認可について名義書換ではなく新規の許認可が必要となる場合や,従業員からの転籍の承諾を得られない場合など,事業の継続が困難とならないように注意する必要があります。

また,場合によっては詐害行為取消権(民法424条1項)の対象となり,債権者により取り消されるおそれがあります。

さらに,時価譲渡となるため含み損益の表面化に伴う譲渡益課税や不動産を移転する場合の不動産取得税等の税負担が重くなることが多く,また,事業譲渡は個々の資産の譲渡と考えますので、消費税の対象にもなります。

会社分割

9a_kaisya_bunkatu.jpg 9b_kaisya_bunkatu.jpg 9c_kaisya_bunkatu.jpg

会社分割とは1つの会社を2つ以上に分けることをいい,会社の事業を分離して別会社に譲渡・承継させる手法です。

会社分割には吸収分割新設分割があります。

吸収分割とは,株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させることをいいます。
これに対して,新設分割とは,1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させることをいいます。

吸収分割は,新設分割と吸収合併とを併合した形態の手続です。
また,2社以上が共同で分割会社となり新設分割をすることも可能であり,これを共同新設分割といいます。

会社分割は,合併のような全事業の包括承継ではなく,会社の部門ごと事業ごとに包括的な承継を行いたい場合に利用されます。

会社分割のメリットとしては,買い手にとって欲しい事業のみを選択して譲受けることができる上,包括承継であることから,事業譲渡のような財産・人材・権利関係の移転についての個別的な手続が不要であり,許認可等の承継が認められないリスクも低い点が挙げられます。

また,事業譲渡と異なり債権者保護手続があるため,詐害行為取消しの対象とはなりませんし,消費税も課せられません。

さらに,承継会社が対価として株式を選択した場合,承継会社はキャッシュを必要としないという点も挙げられます。

一方,優良部門と不採算部門を分割する場合,不採算部門の生き残り戦略を検討する必要があるというデメリットがあります。

第三者割当増資

10_dai3sya_wariate.jpg 第三者割当増資とは,株主以外の特定の者に募集株式を割り当てて資金を調達することをいいます。

第三者割当増資により,対象会社が発行する株式の全部又は一部を取得し,対象会社の支配権を取得するという,M&Aの手法の1つです。

第三者割当増資は,株式譲渡と異なり,M&Aの対価は株式払込金として対象企業に入るので,経営権の移転と併せて対象企業の資本力強化や財務内容の健全化を図る方策として,しばしば用いられます。

また,反対株主等が存在し,既存株式の取得だけでは目標とする株式の保有割合の達成が難しい場合にも,併用して用いられることもあります。

第三者割当増資のメリットとしては,対象会社の経営陣の賛同を得やすく,M&Aを円滑に進めることができるという点があります。

また,単なる株式譲渡と異なり,買収会社の引受によって,対象会社自身にまとまった資金が投入され,設備投資や再建への足がかりとなる資金を得られるので,対象会社の事業運営上非常に有効な手法といえます。

さらに,対象会社の株主の持株比率に変化があるのみで,対象会社自身について変化が生じるものではないので,原則として契約の相手方である取引先からの承諾や行政上の許認可を得る手間がかかりません。

しかしながら,原則として,既存の株主に変化はないので,100%株式取得による完全買収をすることはできません。

株式交換

株式交換とは
3_kabushiki_koukan_syuhou.jpg 株式交換とは,株式会社あるいは合同会社が既に存在する他の株式会社を100%子会社化するための手法の一つで,完全子会社となる会社の全株式を完全親会社となる会社が取得し,その対価として完全子会社となる会社の株主は完全親会社となる会社の株式等を取得する会社法上の手続です。

株主総会の特別決議を経ることで,強制的に対象会社の全株式を取得できるので,既存の会社の買収や子会社の完全子会社化に利用することができます。

会社法の施行に伴い,株式交換によって完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の株主に対して交付する対価が柔軟化され,対価を自社株式ではなく現金あるいは,親会社の親会社の株式とすることも認められました。

また,会社法のもとでは,旧法のもとでは認められていなかった債務超過の会社を完全子会社とする株式交換も,完全親会社の株主総会決議を経れば,実現可能となりました。
株式交換の特徴
株式交換については,以下のような特徴を指摘することができます。
買収資金がなくても実行可能である
株式交換では,対象会社の株式を取得する対価として,自己株式を交付することができるので,買収資金がなくても対象会社を完全子会社化することが可能です。 この点は,株式公開買付等の手法により株式を取得する場合と異なる点です。
株主の各別の同意が不要である
株式交換は,株主総会の特別決議を経ることで,強制的に対象会社の全株式を取得する手続ですので,少数の株主が反対する場合にも完全な支配権を取得することが可能です。 この点も,株式公開買付等の個別の譲受けにより株式を取得する場合とは大きく異なる点です。
公開買付手続による必要がない
金融商品取引法上,上場株式会社の発行済株式の3分の1を超える株式を市場外で取得する場合には,公開買付手続による必要がありますが,株式交換では,このような規制がかかりません。
両当事会社はともに存続する
株式交換では,両当事会社が別法人格のまま存続しますが,このことには他の制度と比較して下記のようなメリットがあります。

まず,両当事会社が従前どおり,別法人格として存続するので,合併の場合のように人事制度の統合等組織統合をする必要がありません。
これにより,組織統合に必要な時間や労力を節約することができます。

また,両当事会社が従前通り営業を継続するので,原則として債権者保護手続を取る必要がありません(例外的に,株式交換新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合の完全子会社,株式交換の対価として自己株式以外の財産を交付する場合の完全親会社においては債権者保護手続が必要となります)。
税務上のメリット
株式交換により受領した株式については,租税特別法の適用により,一定の要件のもと株式売却時点まで課税の繰延べをすることが認められています。

すなわち,株式交換により完全親会社の株式を取得した者は,株式取得時点では簿価での引き継ぎを認められ,譲渡益の実現を遅らせることができます。

公開買付

2_tob.jpg 公開買付け(TOB)とは,不特定かつ多数の者に対し,公告により株券等の買付け等の申込み又は売付けの申込みの勧誘を行い,取引所金融商品市場外で株券等の買付け等を行うことをいいます。 公開買付け(TOB)の定義は,金融商品取引法27条の2第6項に規定されています。

公開買付制度は,株式を大量に買付けようとする者が現れると,株主が買付条件を適切でないと考えても,上場廃止により株式を売却する機会を失うことになりかねないのでやむを得ず売却せざるをえなくなる(売却圧力)傾向になる,あるいは少数株主が公開買付け行われていることを知らず売却機会を失う可能性があるところ,少数株主に十分な情報提供して買付けに応じるか否かを適切に判断する機会を提供することを目的としています。

そして,株式を大量に取得する者は会社の支配権を取得することになり,公開買付けにおいては支配権を取得するにあたっての対価(支配権プレミアム)を少数株主に支払う運用がなされているところ,大量買付者が取得することになる支配プレミアムを少数株主に配分する機能を担っています。

公開買付けを行わなければならない場合は,以下の6つのケースです。
  • 多数の者からの買付け等
  • 少数の者から株式の所有割合が3分の1を超える株式を取得する場合
  • 特定売買等により株式の所有割合が3分の1を超える株式を取得する場合
  • 3ヶ月居以内の急速な買付け等を行う場合で一定の場合
  • 支配権の争奪となる場合の対抗買付け
  • その他政令で定める場合
政令(施行令)で定める場合として,親族や株式保有関係にある会社等の特別関係者の取得を合算した場合に,3ヶ月居以内の急速な買付け等を行う場合があります。

合併

合併手続は,合併契約の締結に始まり,効力発生日後6か月間の事後開示で終わる一連の行為からなる複雑な手続です。 合併手続には,多数の利害関係者が関与し,各手続の瑕疵は合併無効の原因となるため,合併手続の実行に当たっては細心の注意が必要になります。
合併契約の締結
合併に当たっては,当時会社は合併契約を締結しなければなりません(会社法748条)。 合併契約の締結は重要な業務執行に当たるのが通常ですので,取締役会設置会社においては取締役会決議が必要であり(会社法2条7号,362条2項),取締役会設置会社以外の会社においては取締役の過半数による決定(会社法348条2項)が必要です。 各当事会社においては,取締役会決議を経て,代表取締役が合併契約を締結します。 ただし,委員会設置会社が簡易合併や略式組織再編を実施する場合は,取締役会決議により,合併契約の内容の決定について執行役に委任することができます(416条4項16号かっこ書)。
事前開示
合併は当事会社の株主及び債権者に重大な影響を与えることから,株主及び債権者の判断に資するため,所定の書類を事前に開示することが要求されています。

吸収合併の場合,消滅会社は吸収合併契約備置開始日から,合併の効力発生日までの間,吸収合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法782条1項1号,会社規則182条)。

新設合併の場合も,消滅会社は新設合併契約備置開始日から,新設合併設立会社の成立の日までの間,新設合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法803条1項1号,会社規則204条)。

吸収合併における存続会社の場合も,吸収合併契約備置開始日から,効力発生日後6か月を経過する日までの間,同様の開示が求められますが(会社法794条,会社規則191条),新設合併における設立会社については,事後開示のみで足ります。
合併契約の承認決議
吸収合併においては,消滅会社及び存続会社は効力発生日の前日までに,株主総会で吸収合併契約の承認を得る必要があります(会社法783条1項,795条1項)。 新設合併においては,消滅会社は株主総会の決議によって新設合併契約の承認を得る必要があります(会社法804条1項)。 新設会社については,新設会社が成立することが効力発生の前提となりますので,新設会社の「成立の日」すなわち設立登記の日をもって消滅会社の権利義務を承継することになります(会社法49条,754条1項)。 なお,株主総会の決議は,原則として特別決議が要求されています(会社法309条2項12号)。ただし,後述のように簡易合併・略式合併の場合には例外が認められています。
株主の株式買取請求
合併契約が承認されれば,反対株主は合併を阻止することはできませんが,反対株主は会社に対して公正な価格で,自己の有する株式の買取を請求することができます(会社法785条1項,797条1項,806条1項)。
新株予約権者の新株予約権買取請求
株主の株式買取請求と同様に,消滅会社の新株予約権の新株予約権者は,消滅会社に対して,自己の有する新株予約権を公正な価格で買取ることを請求することができます(会社法787条1項,808条1項)。
債権者保護手続
会社債権者は,債務者である合併当事会社が財政状態の悪い会社と合併すると不利益を受けるおそれがあります。 そこで,合併当事会社は, 合併をする旨
  • 存続会社又は消滅会社の商号及び住所
  • 消滅会社及び存続会社の計算書類に関する事項
  • 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
を官報で公告し,かつ,知れている債権者には,各別に催告をしなければなりません(会社法789条1項1号・2項,799条1項1号・2項,810条1項1号・2項)。

債権者が異議を述べた場合には,支払をしなければなりません(会社法789条5項,799条5項,810条5項)。

株券提出手続及び新株予約権証券提出手続
消滅会社が株券発行会社(会社法117条6項)であって現実に株券を発行している場合には,合併の効力発生日までに株券を提出しなければならない旨を,効力発生日の1か月前までに公告し,かつ当該株式の株主及びその登録株式質権者には,個別に通知しなければなりません(会社法219条1項6号)。 この場合,株券は効力発生日に無効になります(会社法219条3項)。 消滅会社が新株予約権証券を発行している場合も,合併の効力発生日までに新株予約権証券を提出しなければならない旨を,効力発生日の1か月前までに公告し,かつ,当該新株予約権者及びその登録新株予約権質権者には,個別に催告しなければなりません(会社法293条1項3号)。
事後開示
吸収合併の場合,存続会社は承継した消滅会社の権利義務その他の吸収合併に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を,効力発生後遅滞なく作成するとともに,効力発生日から6か月間,本店に備え置くことが求められています(会社法801条1項・3項1号,会社規則200条)。 新設合併の場合,新設会社は承継した消滅会社の権利義務その他の新設合併に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を,その成立の日後遅滞なく作成するとともに,新設合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録とあわせて,その成立の日から6か月間,本店に備え置くことが求められています(会社法815条1項・3項1号,会社規則211条・213条)。
合併登記
吸収合併及び新設合併のいずれの場合でも,合併当事会社の本店所在地において,合併登記が必要になります(会社法921条,922条)。
公正取引委員会等への報告
合併には,独占禁止法による公正取引委員会への届出や,金融商品取引法による財務局長への届出が必要な場合があります。 また,上場会社が合併決議を行った場合は金融商品取引所への届出も必要になります。 さらに,公益的要請の強い事業を営む会社については,事業法(銀行法第30条,保険業法第167条,鉄道事業法第26条等)に従い,監督官庁(主務大臣)が許認可を通じて合併を規制していることに注意する必要があります。

簡易合併

kani_gappei.gif 合併であっても,存続会社に比べて消滅会社の規模が小さい等,存続会社の株主に及ぼす影響が軽微なものもあります。 そこで,株式会社を存続会社とする吸収合併であって,以下の場合には,存続会社について,合併承認の株主総会決議なしに合併を行うことが認められています(会社法796条3項,会社規則196条)。
  • 合併に際し交付する存続会社の株式の数に存続会社の1株当たり純資産額を乗じて得た額
  • 合併に際し交付する存続会社の社債その他の財産の帳簿価額の合計額が存続会社の純資産額の5分の1を超えない場合
ただし,上の要件が満たされるときでも,存続会社に合併差損が生じる場合(会社法795条2項1号・2号),または,存続会社が全株式譲渡制限会社であって株式を交付する場合には,簡易合併の手続を取ることはできず,株主総会決議が要求されます(会社法796条3項ただし書)。 また,そうした場合でなくても,存続会社が簡易合併の手続を選択するか否かは自由であり,強制されるものではありません。

略式合併

ryakushiki_gappei.gif吸収合併の当事会社の一方が,他方当事会社(従属会社)の総株主の議決権の10分の9以上を有するときは(特別支配会社,会社法468条1項),手続の簡素化の観点から,従属会社が消滅会社になる場合でも(会社法784条1項),存続会社になる場合でも(会社法796条1項),従属会社における合併承認の株主総会決議は要求されません。

右の要件が満たされるときでも,以下の場合には,略式合併の手続をとることはできず,株主総会決議が要求されます(会社法796条1項ただし書)。
  • 消滅会社である従属会社が公開会社であって,その株主に対し譲渡制限株式等(会社法783条3項,会社規則186条)が交付される場合(会社法784条ただし書)
  • 存続会社である従属会社が全株式譲渡制限会社であって,株式の交付を行う場合
略式合併により株主総会決議が不要となる場合には,不満な株主には株式買取請求が認められています(会社法785条,786条)。 また,合併の差止請求を認める制度が新たに導入され,消滅会社の株主は,法令もしくは定款違反の場合または対価が著しく不当な場合には,合併の差止を請求することが認められます(会社法784条2項)。 他に,無効の訴えや,損害賠償請求等も可能です。

事業譲渡

jigyo_joto.gif 事業譲渡は合併のような包括承継ではなく,通常の取引法上の契約なので,契約で決めた範囲の財産が個別的に移転し,個々の財産の移転手続が必要となってくるのが特徴です。
譲渡会社の手続
取締役会設置会社では,重要な財産の処分には取締役会の決議が必要ですが(会社法362条4項1号),全ての会社において,事業の全部の譲渡および事業の重要な一部の譲渡の場合には,原則として株主総会の特別決議が必要となります(会社法467条1項2号・2号,309条2項11号)。 ただし,?事業の重要な一部の譲渡であって,譲渡により譲渡す資産の帳簿価額が総資産額として法務省令(会社規則134条)で定める方法により算定される額の5分の1を超えない場合(会社法467条1項2号かっこ書,定款で基準を厳格化できる),?略式手続すなわち譲受会社が特別支配会社である場合(会社法468条1項)には株主総会の特別決議は不要です。

事業譲渡等に反対する株主(上記?の特別決議が不要な場合を除く)には,株式買取請求権が認められています(会社法469条1項)。

株主総会決議を要する当事会社は,効力発生日の20日前までに,株主に対して,事業譲渡をする旨を通知しなければなりません(会社法469条3項)。公開会社である場合又は株主総会で事業譲渡契約等の承認を受けた場合はこの通知を公告に代えることができます(会社法469条4項)。

なお,事業譲渡においては,譲渡会社は,全部譲渡の場合でも当然には解散せず,会社債権者の承諾を得て譲受人に免責的債務引き受けをさせない限り,債務を負い続けるので,会社債権者保護のための手続は設けられていません。
譲受会社の手続
取締役会設置会社では,重要な財産の譲受けには取締役会の決議が必要ですが(会社法362条4項1号),全ての会社において,他の会社の事業の全部の譲受けの場合には,原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法467条1項3号,309条2項11号)。

ただし,?略式手続すなわち譲渡会社が特別支配会社である場合(会社法468条1項),?簡易手続すなわち,譲受会社の事業の全部の対価として交付される帳簿価額が譲受会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超えない場合(会社法468条2項,定款で基準を厳格化できる)には,株主総会の特別決議は不要です。

反対株主に株式買取請求権が認められます。

一定規模以上の事業譲受け等の場合には,効力発生日30日前までに公正取引委員会へ届出をすることが必要です。

会社分割

kaisya_bunkatsu.gif 会社分割手続は,吸収分割契約の締結又は新設分割計画の作成に始まり,効力発生日後6か月間の事後開示で終わる一連の行為からなる手続です。会社分割手続には,多数の利害関係者が関与し,各手続の瑕疵は会社分割無効の原因となるため,会社分割手続の実行に当たっては細心の注意が必要になります。
吸収分割契約の締結又は新設分割計画の作成
吸収分割においては,当事会社は吸収分割契約を締結しなければなりません(会社法757条)。

吸収分割契約の締結は重要な業務執行に当たるのが通常ですので,取締役会設置会社においては取締役会決議が必要です(会社法362条4項)。
各当事会社においては,取締役会設置会社以外の場合には取締役の過半数の決定により(会社法348条2項),取締役会設置会社の場合には取締役会決議を経て,代表取締役が吸収分割契約を締結します。
ただし,委員会設置会社が簡易分割や略式分割を実施する場合は,取締役会決議により,吸収分割契約及び新設分割計画の内容の決定について執行役に委任することができます(416条4項17号かっこ書・18号かっこ書)。

新設分割においても,吸収分割と同様に新設分割計画の作成が求められます(会社法762条)。
事前開示
会社分割は当事会社の株主及び債権者に重大な影響を与えることから,株主及び債権者の判断に資するため,所定の書類を事前に開示することが要求されています。

吸収分割の場合,吸収分割会社は吸収分割契約備置開始日から,吸収分割の効力発生日後6か月を経過する日までの間,吸収分割契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法787条2項,会社規則183条)。

新設分割の場合,新設分割会社は新設分割計画備置開始日から,新設分割設立会社成立の日後6か月を経過する日までの間,新設分割計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法803条1項,会社規則205条)。

吸収分割承継会社の場合も,吸収分割契約備置開始日から,効力発生日後6か月を経過する日までの間,同様の開示が求められますが(会社法794条,会社規則192条),新設分割設立会社については,事後開示のみで足ります。
吸収分割契約又は新設分割計画の承認決議
吸収分割においては,吸収分割会社及び吸収分割承継会社は効力発生日の前日までに,株主総会で吸収分割契約の承認を得る必要があります(会社法783条1項,795条1項)。

新設分割においては,新設分割会社は株主総会の決議によって,新設分割計画の承認を得る必要があります(会社法804条1項)。
一方,新設分割設立会社については,新設分割設立会社が成立することが効力発生の前提となりますので,新設分割設立会社の「成立の日」すなわち設立登記の日をもって,新設分割会社の権利義務を承継することになります(会社法49条,764条1項)。

また,株主総会の決議は原則として特別決議を必要とします(会社法309条2項12号)。

株主の株式買取請求
会社分割が承認されれば,反対株主は会社分割を阻止することができませんが,反対株主は会社に対して公正な価格で,自己の有する株式の買取を請求することができます(会社法785条1項,797条1項,806条1項)。
新株予約権者の新株予約権買取請求
株主の株式買取請求と同様に,分割会社の新株予約権の新株予約権者は,分割会社に対して,自己の有する新株予約権を公正な価格で買取ることを請求することができます(会社法787条1項,808条1項)。
債権者保護手続
会社債権者は,債務者である分割当事会社の分割条件によっては不利益を受けるおそれがあります。 そこで,分割当事会社は,?会社分割をする旨,?承継会社又は分割会社の商号及び住所,?分割会社及び承継会社の計算書類に関する事項,?債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報で公告し,かつ,知れている債権者には,各別に催告をしなければなりません(会社法789条2項,799条2項,810条2項)。 また,会社分割においては,労働者の権利を保護するため,一定の条件を満たす労働者や労働組合に対して通知することを義務づけています。
新株予約権証券提出手続
分割会社が新株予約権証券を発行している場合で,分割対価として吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の新株予約権を交付する場合,分割の効力発生日までに新株予約権証券を提出しなければならない旨を,効力発生日の1か月前までに公告し,かつ,当該新株予約権者及びその登録新株予約権質権者には,個別に通知しなければなりません(会社法293条1項4号・5号)。
事後開示
吸収分割の場合,吸収分割会社は吸収分割承継会社と共同して,吸収分割承継会社が承継した吸収分割会社の権利義務その他の吸収分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を,効力発生後遅滞なく作成するとともに,効力発生日から6か月間,本店に備え置くことが求められています(会社法791条1項1号・2項・3項1号,会社規則201条)。

新設分割の場合,新設分割会社は新設分割設立会社と共同して,新設分割設立会社が承継した新設分割会社の権利義務その他の新設分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を,その成立の日後遅滞なく作成するとともに,新設分割計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録とあわせて,その成立の日から6か月間,本店に備え置くことが求められています(会社法811条1項1号,2項,会社規則209条)。

新設分割設立会社も同様の作成及び開示が求められます(会社法815条2項,3項1号,会社規則212条)。
会社分割登記
吸収分割及び新設分割のいずれの場合も,会社分割当事会社の本店所在地において会社分割登記が必要になります(会社法923条,924条)。
公正取引委員会等への届出
会社分割には,独占禁止法による公正取引委員会への届出や,金融商品取引法による財務局長への届出が必要な場合があります。

また,上場会社が会社分割決議を行った場合は,金融商品取引所への届出も必要になります。

さらに,公益的要素の強い事業を営む会社については,事業法(銀行法第30条,保険業法第173条の6,鉄道事業法第26条等)に従い,監督官庁(主務大臣)が許認可を通じて会社分割を規制していることに注意する必要があります。

簡易分割・略式分割

吸収合併の存続会社について簡易合併があるように,会社分割についても,分割会社または承継会社の株主に及ぼす影響が軽微なものについては,その会社の株主総会の承認決議なしに分割を行うことが認められています(簡易分割)。   

また,吸収分割の一方の当事者会社が他方の特別支配会社である場合には,略式合併と同様に,従属会社である当事会社における株主総会の分割承認決議は要求されません。

第三者割当増資

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募集事項の決定・公示
公開会社の場合
公開会社では,取締役会の決議によって,?募集株式の数(種類株式発行会社にあっては,募集株式の種類および数),?募集株式の払込金額(募集株式1株と引換えに払い込む金銭または給付する金銭以外の財産の額)またはその算定方法,?金銭以外の財産を出資の目的とするときはその旨並びに当該財産の内容及び価額,?募集株式と引換えにする金銭の払込みまたは財産の旧の期日またはその期間,?株式を発行するときは増加する資本金及び資本準備金に関する事項を,決定しなければなりません(会社法199条,201条)。

これらの募集事項のうち,?募集株式の払込金額については,既存の株主の利益を害しないため,決定する払込金額は公正でなければならず,原則として,株式の時価を基準とする価額でなければなりません。

また,払込金額が,募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合は,株主総会の特別決議が必要となり,取締役は株主総会において必要な理由を説明しなければなりません(会社法199条3項,201条1項前段,199条2項,309条2項5号)。

そして,既存株主に差止めの機会を与えるため,払込期日または払込期間の2週間前までに,募集事項を通知しなければなりません(会社法201条3項)。 この通知は公告をもって代えることができます(会社法201条4項)。ただし金融商品取引法に基づく届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合(会社規則40条)には,この通知・公告は不要です(会社法201条5項)。
非公開会社の場合
募集事項は,株主総会の特別決議で決定するほかは,公開会社の場合とほぼ同じです(会社法199条1項?3項・5項,309条2項5号)。

ただし,株主総会の特別決議によって,募集事項の決定を取締役(代表取締役会設置会社では取締役会)に委任することができ(会社法220条1項?3項,309条2項5号),この場合には,募集株式の数の上限および払込金額の下限を定めなければなりませんが(会社法200条1項後段),株主総会で決議するので,募集事項の公示は不要です(会社法201条3項・4項)。

また,種類株式発行会社においては,種類株主の利益を保護するため,募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは,その種類の株式に関する募集事項の決定またはその種類の株式に関する募集事項の決定の委任は,原則としてその種類株主総会の特別決議を経なければなりません(会社法199条4項,200条4項,324条2項2号)。
募集株式の申込み・割当
原則として,株式会社は,募集株式の引受の申込みをしようとする者に対し,株式会社の商号,募集事項等を通知し(会社法203条1項),その申込みをする者は,氏名又は名称を及び住所等を記載した書面を交付して申込みますが(会社法203条2項),募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受を行う契約を締結する場合(総数引受契約)には,この申込みの手続および割当の手続は不要です(会社法205条)。実際には,会社と第三者との間には,既に割り当てる株式の種類・数,払込金額等に関する合意があることが多く,総数引受契約が締結されることが多いです。
出資の履行・募集株式の発行等の効力
募集株式の引受人は,払込期日または払込期間内に,払込取扱場所において,募集株式の払込金額の全額を払い込まなければなりません(会社法208条1項)。

募集株式の引受人は,このような出資の履行をしないときは,その出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失います(会社法208条5項)。

募集株式の引受人は,払込期日を定めた場合には当該期日,払込期間を定めた場合には出資の履行をした日に,株主となります(会社法209条)

募集株式の発行等が効力を生じると,新株発行の場合には会社の発行済株式の総数や種類が増加するとともに,会社の資本金又は資本準備金が増加するので(会社法445条1項?3項),変更登記をする必要があります(会社法911条3項5号・9号,915条1項・2項)。
ただし,この登記は設立の登記と異なり,株式発行の効力発生要件ではなく,単に公示的な意味を有するに過ぎません。

株式交換の手続

4_kabusiki_koukan_tetuzuki.jpg  

株式交換契約締結まで

デューデリジェンスの実施、株式交換契約の内容確定

 デューデリジェンスの結果、対象会社と株式交換を行うことが決まれば、次に対象会社の株式を取得する対価として、対象会社の株式1株に対して自己株式何株を交付するか(あるいはいくらの現金を交付するか)等株式交換契約の内容を決定することとなります。

取締役会の承認

 このようにして株式交換契約の内容が確定すると、両当事会社において株式交換契約締結について、取締役会の承認等を得る必要があります(会社法362条4項)。取締役会設置会社においては、取締役会決議、取締役会設置会社以外の会社(委員会設定会社を除く)においては、取締役の過半数による承認が必要となります。
 株式交換契約の締結は「重要な業務執行」に当たるのが通常ですので、執行役への委任はできません。
 両当事会社で株式交換契約の締結が承認された後、株式交換契約を締結します(会社法767条)。

株式交換契約締結から効力発生日まで

事前開示書類の備置

 以下では、主に株式交換独自の手続について説明しますが、当然、株主総会の準備もこれから述べる手続と並行して行う必要があります。
 株主が株式交換に賛成するべきか否かの判断資料、債権者が株式交換に対して異議を述べるべきか否かの判断資料とするため、両当事会社は、通常、株式交換の承認を求める株主総会の2週間以上前から株式交換の効力発生後6カ月を経過する日まで、所定の書類を両当事会社の本店に備え置かなければなりません(事前開示書類の備置。会社法782条1項、794条1項)。
開示すべき事項は以下のとおりです(会社法施行規則184条1項)。
(1)交換対価の相当性に関する事項
(2)交換対価について参考となるべき事項
(3)株式交換に係る新株予約権の定めの相当性に関する事項
(4)計算書類等に関する事項
(5)債権者保護手続において異議を述べることができる債権者がいる場合、株式交換が効力を生ずる日以後における完全親会社の債務(当該債権者に対して負担する債務に限る)の履行の見込みに関する事項

株主に対する通知

 そして、後述する反対株主の株式買取請求権行使の機会を保障するため、株式交換の効力発生日の20日前までに株主に、株式交換する旨等を通知する必要があります(会社法785条3項、4項)。
 なお、株式交換に関する株主総会を開催する場合にも、通常の株主総会同様、株主に対する招集通知を発送する必要があり、招集通知において、株式交換に係る議案の内容、株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得に係る議案の内容を記載しなければならないほか(会社法298条1項5号、299条4項、会社法施行規則63条7項ル、ヲ)、書面によって議決権を行使することができることとした場合には、招集通知に際して交付する株主総会参考書類(会社法301条)の中で以下の事項について記載しなければなりません。
(1)株式交換を行う理由
(2)株式交換契約の内容の概要
(3)完全子会社の場合、株主総会の招集を決定した日における事前開示事項の概要
(4)完全親会社の場合、株主総会の招集を決定した日における事前開示事項の概要

債権者に対する株式交換に関する通知・公告

 また、後述するとおり、株式交換において債権者保護手続が必要となるのは例外的な場合ですが、債権者保護手続が必要な場合には、株式交換の効力発生日より前に、異議申述期間を1か月以上もうけて、株式交換に関する公告・催告を行わなければなりません(会社法789条2項、799条2項)。

株主総会決議
   

 株式交換を行うには、原則として、株式交換の効力発生日の前日までに、両当事会社において、株主総会の特別決議による承認を得なければなりません(会社法783条1項、795条1項、309条2項11号)。

債権者保護手続

 株式交換は、両当事会社は独立の法人格を維持するため、債権者保護手続が必要となるのは以下の例外的な場合に限られています(会社法789条1項3号、799条1項3号、768条1項4号ハ、)。  
 すなわち、完全子会社となる会社においては、株式交換契約において、新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合、完全親会社となる会社においては、完全子会社となる会社の株式を取得する対価として株式(その他これに準ずるもの)のみを交付する場合以外の場合には、会社の資産に変動が生じるので例外的に債権者保護手続が必要とされています。
 債権者が異議を述べた場合、株式交換をしても債権者を害する恐れがない場合を除いて、両当事会社は、当該債権者に対して債務を弁済する等しなければなりません(会社法789条5項、799条5項)

反対株主の株式買取請求権

 前述のとおり、株式交換を用いると、一部の株主が株式交換に反対した場合でも、株主総会決議を経ることで、対象会社の全株式を強制的に取得することができます。
 そこで、株式交換に反対する株主には、投下資本の回収の機会を保証するため、会社に対して自己の有する株式を公正な価格で買取るべきことを請求することができる権利(反対株主の株式買取請求権)が認められています(会社法785条、797条)。 
 この権利を行使するためには、株式交換を承認する株主総会に先立って、株式交換に反対である旨を会社に対して通知し、かつ当該株主総会において、株式交換に対して反対する旨の議決権を行使する必要があります(当該株主総会において議決権を行使することができない株主については、この手続は必要ありません。また、簡易株式交換の様に株主総会決議が不要である場合には、すべての株主が反対株主となることができます)。
 なお、買取価格の協議が整わなかった場合には、反対株主あるいは会社は、裁判所に対して買取価格決定の申立てをすることが可能です(会社法786条2項、798条2項)。

株券及び新株予約権提出手続

 株式交換により完全子会社となる会社が株券発行会社(会社法117条6項)であって現実に株券を発行している場合、効力発生日までに株券を提出しなければならない旨を、効力発生日の1か月前までに公告し、かつ株主及び登録株式質権者に対して各別に通知しなければなりません(会社法219条1項7号)。提出された株券は、効力発生日に無効となります(会社法219条3項)。
 このことは、株式交換により完全子会社となる会社が、新株予約権証券を発行している場合で、株式交換の対価として、完全親会社となる会社の金株予約権を交付する場合も同様です(会社法293条1項6号)

効力発生日以降

 両当事会社の株主総会において、株式交換契約の締結が承認されると、株式交換契約に定めた日に効力が発生します(会社法769条1項2号)。
株式交換完全子会社と株式交換完全親会社は、共同して、所定の事項を記載した書面を、株式交換の効力発生後遅滞なく作成し、効力発生日から6か月間、本店に備え置く必要があります(会社法791条1項2号、811条1項2号)。
 事後開示書類に記載すべき事項は以下のとおりです。
(1)株式交換が効力を生じた日
(2)完全子会社における株式買取請求、新株予約権買取請求、債権者保護手続の経過
(3)完全親会社における株式買取請求、債権者保護手続の経過
(4)株式交換により完全親会社に移転した完全子会社の株式の数
(5)その他株式交換に関する重要な事項
 これらの書類に関しては、株式交換完全親会社の株主及び債権者(会社法801条6項)並びに株式交換の効力発生日に株式交換完全子会社に株主及び新株予約権者であった者(会社法791条4項、811条4項)の閲覧及び謄本・抄本交付請求に応じる必要があります。
 株式交換に伴い、株式交換完全親会社の資本金の額や発行株式総数を変更した場合、その旨の登記を効力発生日から2週間以内に行う必要があります(会社法921条)。

略式株式交換・簡易株式交換

 株式交換以前から親子関係が存在する場合において、親会社が子会社の特別支配会社である場合(会社法468条1項、会社法施行規則136条。典型的には、親会社が子会社の総株主の議決権の90%以上を保有している場合)、両会社における株主総会決議の承認が不要となる略式株式交換の手続をとることができる場合があります。
 また、(1)株式交換によって完全親会社となる会社が完全子会社となる会社に対して交付する株式の数に1株当たり純資産額を乗じて得た額と、(2)株式交換よって完全親会社となる会社が完全子会社となる会社に交付する社債損他財産合計額が完全親会社となる会社の準遺産額の5分の1を超えない場合には、完全親会社となる会社に及ぼす影響が小さいので、完全親会社となる会社での株主総会決議は不要となる簡易株式交換の手続をとることができる場合があります。

公開買付

koukai_kaitsuke.gif 公開買付けの手順の概要は以下のとおりです。
公開買付開始公告
公開買付けを開始する前に,公開買付者は,公開買付者の氏名又は名称,住所又は所在地,公開買付けにより株券等の買付け等を行う旨,買付け等の目的,価格,買付予定株券等の数,買付期間,買付後における公開買付者の株券等所有割合,対象者・役員との買付けに関する合意の有無等を,公告しなければなりません(金融商品取引法27の3第1号)。
公開買付届出書の提出
公開買付者は,公開買付開始公告を行った日に,公開買付届出書を提出しなければなりません。 公開買付届出書には,買付け等の価格,買付予定の株券等の数,買付期間,買付け等に係る受渡しその他の決済,公開買付けに付した条件,公開買付けの目的,公開買付者等が記載されます(金融商品取引法27の3第2号)。
公開買付けの開始
公開買付開始公告,公開買付届出書を提出しますと,以下の行為を行えるようになります(金融商品取引法27の3第3号・他社株買付府令15)。
  1. 買付け等の申込み又は売付け等の申込みの勧誘
  2. 公開買付説明書の交付
  3. 買付け等の申込みの承諾の受付け,又は売付け等の申込みの受付け
  4. 応募株券等の受入れ
公開買付届出書の写しの送付
公開買付者は,公開買付届出書を提出した後,直ちにその写しを,公開買付けに係る株券等の発行者である対象者及びその株券等が上場されている金融商品取引所又は登録されている認可金融商品取引業協会に送付しなければなりません(金融商品取引法27の3第4号)。
公開買付説明書の交付
公開買付者は,公開買付届出書の内容等を記載した公開買付説明書を作成し,これを応募株主に対し,買付け等に先立って,又は買付け等と同時に交付しなければなりません(金融商品取引法27の9)。
対象者の意見表明報告書
公開買付けの対象者は,公開買付開始公告が行われた日から10営業日の期間内に,その公開買付けに関する意見を記載した意見表明報告書を提出しなければなりません(金融商品取引法27の10第1号)。
意見表明報告書の写しの送付
公開買付けの対象者は,意見表明報告書を提出したとき,直ちにその写しを,公開買付者及びその株券等が上場している金融商品取引所又登録されている認可金融商品取引業協会に送付しなければなりません(金融商品取引法27の10第9号)。
対質問回答報告書の写しの送付
公開買付者は,公開買付けの対象者の意見表明報告書に質問が記載されている場合,意見表明報告書の写しの送付を受けた日から5営業日の期間内に,その質問に対する回答を記載した対質問回答報告書を提出しなければなりません。
対質問回答報告書の写しの送付
公開買付者は,対質問回答報告書を提出したとき,直ちにその写しを,公開買付けに係る株券等の発行者である対象者及びその株券等が上場されている金融商品取引所又は登録されている認可金融商品取引業協会に送付しなければなりません(金融商品取引法27の10第13号)。
公開買付けの結果の公告及び公開買付報告書の提出
公開買付者は,公開買付期間の末日の翌日に,公開買付け結果について公告又は公表するとともに,同日にその公告又は公表の内容等を記載した公開買付報告書を提出し,その後直ちにその写しを対象者,金融商品取引所等に送付することが義務付けられています(金融商品取引法27の13第1号・2号)。
代金の決済,株券等の受渡し
代金の決済,株券等の受渡しが行われます。