1.M&Aの本質に対する理解
M&Aは,映画やテレビで見るような売買差益を得るようなマネーゲームではありません。
事業を創り育ててきた経営者の事業に対する思いを理解した上で,その思いを尊重しなければM&Aそのものが成立しませんし,M&A後に事業が劣化することもあります。
そして,譲渡される事業で働いている従業員やその家族に対する配慮もなければ事業の価値が大きく損なわれる可能性があります。
また,譲り受け側にとって,M&Aは事業戦略の一貫として行われます。
M&Aが成功するか否かは,譲り受ける事業が譲り受け側企業の事業戦略にマッチしているか否かによります。
M&Aを成功させるためには,譲り受け側企業の事業戦略を理解し,譲渡の対象となる事業がそれにマッチしているか否かを判断する能力が必要になるのです。
2.スキーム構築力
M&Aには,M&Aの手法の項目で説明するとおり様々な手法があります。こ
れらの手法においていかなる手法を採用するかは,M&A後の事業形態やM&Aを行う当事会社の資本政策によって決定されます。
M&Aを成功させるためには,M&A後の事業形態や当事会社の資本政策を構築して最善のM&A手法を選択し,計画を立案しなければなりません。
これには,会社法,金融商品取引法をはじめとした様々な法律,会計,経営等に関する専門的な知識や,企画立案力が必要となるのです。
3.調整能力
M&Aでは,非常に多くの利害関係者が存在します。
両当事会社とも,役員,株主,従業員,取引先,金融機関等の利害関係者がおり,これらの利害関係者の利害調整が必要になります。
また,譲り渡し側会社においては,オーナー社長やその家族,オーナー社長が長年付き合ってきた顧問税理士等との調整が必要になります。
他方,譲り受け側会社においては,M&Aを担当することになる役員と事業担当部署を統括する社員との調整,取締役会,弁護士,監査法人との調整も必要になります。
法的な利害関係人だけでなく,事実上の利害関係人を含めた多くの利害関係者との調整を怠ると,M&Aの計画を立て,いざ実行しようとしたときに反対意見が飛び出したために計画が頓挫するということもあります。
4.マッチング力
M&Aは,これを行う当事者が存在してはじめて成立するものです。
事業を譲渡したいと思ってもそれを譲り受けたいという企業が存在しなければM&Aは成立しませんし,事業を譲り受けたいと考えている企業があったとしても譲渡したいと考えている企業が現れなければM&Aは成立しません。
M&Aの目的の項目で説明したように,譲り渡し側の企業が譲渡しを検討する事情というものは,対外的にかつ大々的に公表する内容ではありません。
この結果,現在のM&A市場では,譲り受けを希望する企業は多く存在しても,それにマッチした譲り渡し側の企業が現れないという構造となっています。
このようなM&A市場において,M&Aをマッチングする力というものが非常に重要になるのです。