企業再編とは、一般には、企業グループを再編することを言います。

 IT通信技術の進展、産業技術の発展、貿易障壁の撤廃などにより、現在、企業活動の範囲はグローバル化の一途を辿っており、企業活動のスピードもかつてないものとなっています。

 その結果、昨今、長年かけて築き上げてきたビジネスモデルが一夜にして通用しなくなってしまうという事態も珍しくありません。巨大企業であっても、このような変化の激しい事業環境の変化に対応できないとなれば、衰退は避けられない事態となります。
 そこで重要となるのは、自らの事業の強みと弱みを分析し、貴重な経営資源について選択と集中を行い、いかにして経営効率を高めることが出来るかという視点です。
弱みとなっている事業部門について、これを切り離したり、他の事業を買収することで強化したりすることができれば、企業グループ全体としての経営効率を高めることが期待できます。

 従来型産業にとって国内市場は成熟・飽和しており、過度の価格競争は企業の体力を徒に消耗するだけの結果となっています。

 過当競争を避け、競合相手と合併することができれば、むしろ規模の利益を活かしてコストを低減させることで、経営効率を高めることも可能となります。

 本業について高い成長が見込めないものと判断されれば、他業種の事業を買収し、経営リスクを分散することも可能です。

 このように企業再編は、経営資源を集中、経営リスクの分散を実現するための重要な役割を担っています。

総論

 企業再編は、法律的には、企業の結合・事業の分離を意味することから、その実現のため、会社法上の様々な組織再編行為の手法が用いられることになります。
 株式の譲渡という基本形の他、最も典型的なものが、2以上の会社が1つの会社に合一化する合併です。
ある会社のある事業部門を他の会社に譲渡したい(切り離したい)場合には、事業譲渡或いは会社分割といった手法が採用されます。不要な事業用資産等を他の会社に移転するにあたっては、現物出資の方法によることも考えられます。
 他の会社を子会社化する方法としては、100%の株式を取得するという古典的な手法の他、株式交換といった手法も使えますし、持株会社を簡便に設立するには株式移転といった手法も存します。
 これらの手法には、その選択により、法律上・会計上・税務上、その手続・効果において、それぞれメリット・デメリットが存します。
 このように、企業再編においては、まず当該企業が、経営戦略上、どのような企業再編を目指すのかしっかりと検討を重ねた上で、目指すべき企業再編を達成するためにどのような手法を採用するのが適当か、法律面、会計面、税務面を含めた検討を行い、最適な方法を選択して実行することになります。

合併

 合併とは、2つ以上の会社が契約により1つの会社になることをいいます。会社法上、会社の合併は、吸収合併と新設合併の2種類に分けられます。
吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます。
一方、新設合併とは、2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいいます。

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経済的には対等合併であっても、法的には吸収合併の方法が採られ、新設合併が採られることはほとんどありません。その理由は、吸収合併と異なり、新設合併の場合には当時会社の全てが解散するため、諸官庁の許認可、財産権の移転登記、各種登録、新株発行手続をすべての会社で新たにやり直さなければならないため、非常に煩雑であるからです。
 合併のメリットとしては、まず、規模拡大によるスケールメリットやシナジー効果を得られるということが挙げられます。企業文化・社内体制やシステム等の統合がスムーズにいけば、経営の効率化が図れるので、統合のメリットが十分に享受できることになります。
 また、事業譲渡と異なり、個別の資産等の移転手続が不要です。この点で、合併は手続として効率的であるというメリットがあります。
 さらに、買い手にとってはキャッシュを要せずに行うこともできることから、買い手の資金負担を抑えることができます。
 一方、合併のデメリットとしては、「合併病」と言われるように、組織・構造の変革や従業員の融和に失敗し、かえって経営の非効率化を招くこともあります。

事業譲渡

 事業譲渡とは、ある事業に関する「事業財産」を第三者に譲渡することです。判例では、「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に同法25条(会社法21条)に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう」とされています。事業財産には、土地、建物、什器などの有形資産だけでなく、従業員、取引先等の無形資産を含みます。

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 事業譲渡は、合併のように売り手が買い手のすべてを包括的に買収することを望まず、一部の事業部門や一部の資産・負債のみを買収したい場合に選択されます。
 事業譲渡のメリットとしては、買い手にとって欲しい事業、欲しい資産・負債のみを選択して譲り受けることができるということが挙げられます。引き継ぐ資産・負債を契約に定めた上で譲り受けるため、簿外債務を引き受けるリスクが低く、また、事業財産を直接買い手もしくはその関連会社が取り込むため、企業規模が拡大しスケールメリットも得られます。
 また、売り手にとっては、売却代金が直接入ってくるため、債権者への弁済原資に充てることができます、
 一方、事業譲渡のデメリットとしては、合併と異なり、個別の資産や契約毎に移転手続を行わなければならず、手続として極めて煩雑である点が挙げられます。特に、事業の許認可について名義書換ではなく新規の許認可が必要となる場合や、従業員からの転籍の承諾を得られない場合など、事業の継続が困難とならないように注意する必要があります。
 また、場合によっては詐害行為取消権(民法424条1項)の対象となり、債権者により取り消されるおそれがあります。
 さらに、時価譲渡となるため含み損益の表面化に伴う譲渡益課税や不動産を移転する場合の不動産取得税等の税負担が重くなることが多く、また、事業譲渡は個々の資産の譲渡と考えますので、消費税の対象にもなります。

会社分割

 会社分割とは1つの会社を2つ以上に分けることをいい、会社の事業を分離して別会社に譲渡・承継させる手法です。
 会社分割には吸収分割と新設分割があります。吸収分割とは、株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させることをいいます。これに対して、新設分割とは、1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させることをいいます。
 吸収分割は、新設分割と吸収合併とを併合した形態の手続です。また、2社以上が共同で分割会社となり新設分割をすることも可能であり、これを共同新設分割といいます。

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 会社分割は、合併のような全事業の包括承継ではなく、会社の部門ごと事業ごとに包括的な承継を行いたい場合に利用されます。
 会社分割のメリットとしては、買い手にとって欲しい事業のみを選択して譲受けることができる上、包括承継であることから、事業譲渡のような財産・人材・権利関係の移転についての個別的な手続が不要であり、許認可等の承継が認められないリスクも低い点が挙げられます。
 また、事業譲渡と異なり債権者保護手続があるため、詐害行為取消しの対象とはなりませんし、消費税も課せられません。
 さらに、承継会社が対価として株式を選択した場合、承継会社はキャッシュを必要としないという点も挙げられます。
 一方、優良部門と不採算部門を分割する場合、不採算部門の生き残り戦略を検討する必要があるというデメリットがあります。

現物出資

 現物出資とは、会社の設立、新株発行にあたって金銭以外の財産を持って出資に充てることを言います。
 株式の発行にあたっては、事業用資産といった金銭以外の財産をもって出資(現物出資)することも可能ですが、かかる現物出資財産を過大に評価して株式を発行することになると、会社の資本充実を害し、債権者や他の株主に損害を与えることになります。
 このため募集株式発行に際して現物出資を行う場合、次の例外を除いて、原則として裁判所選任の検査役の調査を受けることが、会社法上要求されています。
(1)募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合(会社法207条9項1号)
(2)現物出資財産の総額が500万円を超えない場合(会社法207条9項2号)
(3)現物出資の対象となった市場価格のある有価証券について、募集事項に記載・記録された価額が市場価格を超えない場合(会社法207条9項3号)
(4)現物出資財産の価格等が相当であることについて、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人、による証明を受けた場合
(5)現物出資財産が不動産の場合、不動産鑑定士の鑑定評価を受けた上で、財産の価格等が「相当である」ことにつき(4)に掲げる弁護士等の証明を受けている場合。
(6)現物出資財産が会社に対する金銭債権であって、当該債権に係る負債の帳簿価額以下で出資する場合(会社法209条9項4号)。
 なお現物出資については、時価で資産負債を譲渡したとみなして、譲渡益に対して課税がなされるのが原則ですが、一定の要件を満たす場合には、適格現物出資として課税を繰延べることとしています。

株式交換

 株式交換とは、株式会社あるいは合同会社が既に存在する他の株式会社を100%子会社化するための手法の一つで、完全子会社となる会社の全株式を完全親会社となる会社が取得し、その対価として完全子会社となる会社の株主は完全親会社となる会社の株式等を取得する会社法上の手続です。
 株主総会の特別決議を経ることで、強制的に対象会社の全株式を取得できるので、既存の会社の買収や子会社の完全子会社化に利用することができます。
 会社法の施行に伴い、株式交換によって完全親会社となる会社が完全子会社となる会社の株主に対して交付する対価が柔軟化され、対価を自社株式ではなく現金あるいは、親会社の親会社の株式とすることも認められました。
 また、会社法のもとでは、旧法のもとでは認められていなかった債務超過の会社を完全子会社とする株式交換も、完全親会社の株主総会決議を経れば、実現可能となりました。

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株式交換の特徴
 株式交換については、以下のような特徴を指摘することができます。
買収資金がなくても実行可能である
 株式交換では、対象会社の株式を取得する対価として、自己株式を交付することができるので、買収資金がなくても対象会社を完全子会社化することが可能です。この点は、株式公開買付等の手法により株式を取得する場合と異なる点です。
株主の各別の同意が不要である
 株式交換は、株主総会の特別決議を経ることで、強制的に対象会社の全株式を取得する手続ですので、少数の株主が反対する場合にも完全な支配権を取得することが可能です。この点も、株式公開買付等の個別の譲受けにより株式を取得する場合とは大きく異なる点です。
公開買付手続による必要がない
 金融商品取引法上、上場株式会社の発行済株式の3分の1を超える株式を市場外で取得する場合には、公開買付手続による必要がありますが、株式交換では、このような規制がかかりません。
両当事会社はともに存続する
 株式交換では、両当事会社が別法人格のまま存続しますが、このことには他の制度と比較して下記のようなメリットがあります。  まず、両当事会社が従前どおり、別法人格として存続するので、合併の場合のように人事制度の統合等組織統合をする必要がありません。これにより、組織統合に必要な時間や労力を節約することができます。  また、両当事会社が従前通り営業を継続するので、原則として債権者保護手続を取る必要がありません(例外的に、株式交換新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合の完全子会社、株式交換の対価として自己株式以外の財産を交付する場合の完全親会社においては債権者保護手続が必要となります)。
税務上のメリット
 株式交換により受領した株式については、租税特別法の適用により、一定の要件のもと株式売却時点まで課税の繰延べをすることが認められています。  すなわち、株式交換により完全親会社の株式を取得した者は、株式取得時点では簿価での引き継ぎを認められ、譲渡益の実現を遅らせることができます。  

株式移転

 株式移転とは、「一又は二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させること」(会社2条32号)を言います。
 株式移転は、通常、複数の株式会社が共同で設立した新設会社において、各従来会社の株主に新設会社の株式を交付することで、各従来会社の株式を新設会社に100%移転して、各従来会社を新設会社の完全子会社とする、いわゆるホールディングカンパニーを作り出すための手法です。 以下、株式移転の項においては、便宜上、新設会社を完全親会社、従来会社を完全子会社と言うことにします。

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 株式移転は、株式交換と同様に、既存の法人格が維持されますので、権利義務の承継といった問題は生じません。

合併の手続

 合併手続は、合併契約の締結に始まり、効力発生日後6か月間の事後開示で終わる一連の行為からなる複雑な手続です。合併手続には、多数の利害関係者が関与し、各手続の瑕疵は合併無効の原因となるため、合併手続の実行に当たっては細心の注意が必要になります。

合併契約の締結

 合併に当たっては、当時会社は合併契約を締結しなければなりません(会社法748条)。合併契約の締結は重要な業務執行に当たるのが通常ですので、取締役会設置会社においては取締役会決議が必要であり(会社法2条7号、362条2項)、取締役会設置会社以外の会社においては取締役の過半数による決定(会社法348条2項)が必要です。
各当事会社においては、取締役会決議を経て、代表取締役が合併契約を締結します。ただし、委員会設置会社が簡易合併や略式組織再編を実施する場合は、取締役会決議により、合併契約の内容の決定について執行役に委任することができます(416条4項16号かっこ書)。

事前開示

 合併は当事会社の株主及び債権者に重大な影響を与えることから、株主及び債権者の判断に資するため、所定の書類を事前に開示することが要求されています。
 吸収合併の場合、消滅会社は吸収合併契約備置開始日から、合併の効力発生日までの間、吸収合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法782条1項1号、会社規則182条)。
新設合併の場合も、消滅会社は新設合併契約備置開始日から、新設合併設立会社の成立の日までの間、新設合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法803条1項1号、会社規則204条)。
 吸収合併における存続会社の場合も、吸収合併契約備置開始日から、効力発生日後6か月を経過する日までの間、同様の開示が求められますが(会社法794条、会社規則191条)、新設合併における設立会社については、事後開示のみで足ります。

合併契約の承認決議

 吸収合併においては、消滅会社及び存続会社は効力発生日の前日までに、株主総会で吸収合併契約の承認を得る必要があります(会社法783条1項、795条1項)。
 新設合併においては、消滅会社は株主総会の決議によって新設合併契約の承認を得る必要があります(会社法804条1項)。新設会社については、新設会社が成立することが効力発生の前提となりますので、新設会社の「成立の日」すなわち設立登記の日をもって消滅会社の権利義務を承継することになります(会社法49条、754条1項)。
 なお、株主総会の決議は、原則として特別決議が要求されています(会社法309条2項12号)。ただし、後述のように簡易合併・略式合併の場合には例外が認められています。

株主の株式買取請求

 合併契約が承認されれば、反対株主は合併を阻止することはできませんが、反対株主は会社に対して公正な価格で、自己の有する株式の買取を請求することができます(会社法785条1項、797条1項、806条1項)。

新株予約権者の新株予約権買取請求

 株主の株式買取請求と同様に、消滅会社の新株予約権の新株予約権者は、消滅会社に対して、自己の有する新株予約権を公正な価格で買取ることを請求することができます(会社法787条1項、808条1項)。

債権者保護手続

 会社債権者は、債務者である合併当事会社が財政状態の悪い会社と合併すると不利益を受けるおそれがあります。そこで、合併当事会社は、(1)合併をする旨、(2)存続会社又は消滅会社の商号及び住所、(3)消滅会社及び存続会社の計算書類に関する事項、(4)債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報で公告し、かつ、知れている債権者には、各別に催告をしなければなりません(会社法789条1項1号・2項、799条1項1号・2項、810条1項1号・2項)。債権者が異議を述べた場合には、支払をしなければなりません(会社法789条5項、799条5項、810条5項)。

株券提出手続及び新株予約権証券提出手続

 消滅会社が株券発行会社(会社法117条6項)であって現実に株券を発行している場合には、合併の効力発生日までに株券を提出しなければならない旨を、効力発生日の1か月前までに公告し、かつ当該株式の株主及びその登録株式質権者には、個別に通知しなければなりません(会社法219条1項6号)。この場合、株券は効力発生日に無効になります(会社法219条3項)。
 消滅会社が新株予約権証券を発行している場合も、合併の効力発生日までに新株予約権証券を提出しなければならない旨を、効力発生日の1か月前までに公告し、かつ、当該新株予約権者及びその登録新株予約権質権者には、個別に催告しなければなりません(会社法293条1項3号)。

事後開示

 吸収合併の場合、存続会社は承継した消滅会社の権利義務その他の吸収合併に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を、効力発生後遅滞なく作成するとともに、効力発生日から6か月間、本店に備え置くことが求められています(会社法801条1項・3項1号、会社規則200条)。新設合併の場合、新設会社は承継した消滅会社の権利義務その他の新設合併に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を、その成立の日後遅滞なく作成するとともに、新設合併契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録とあわせて、その成立の日から6か月間、本店に備え置くことが求められています(会社法815条1項・3項1号、会社規則211条・213条)。

合併登記

 吸収合併及び新設合併のいずれの場合でも、合併当事会社の本店所在地において、合併登記が必要になります(会社法921条、922条)。

公正取引委員会等への報告
 合併には、独占禁止法による公正取引委員会への届出や、金融商品取引法による財務局長への届出が必要な場合があります。また、上場会社が合併決議を行った場合は金融商品取引所への届出も必要になります。さらに、公益的要請の強い事業を営む会社については、事業法(銀行法第30条、保険業法第167条、鉄道事業法第26条等)に従い、監督官庁(主務大臣)が許認可を通じて合併を規制していることに注意する必要があります。

簡易合併

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 合併であっても、存続会社に比べて消滅会社の規模が小さい等、存続会社の株主に及ぼす影響が軽微なものもあります。そこで、株式会社を存続会社とする吸収合併であって、(1)合併に際し交付する存続会社の株式の数に存続会社の1株当たり純資産額を乗じて得た額、および、(2)合併に際し交付する存続会社の社債その他の財産の帳簿価額の合計額が存続会社の純資産額の5分の1を超えない場合には、存続会社について、合併承認の株主総会決議なしに合併を行うことが認められています(会社法796条3項、会社規則196条)。
 右の要件が満たされるときでも、存続会社に合併差損が生じる場合(会社法795条2項1号・2号)、または、存続会社が全株式譲渡制限会社であって株式を交付する場合には、簡易合併の手続を取ることはできず、株主総会決議が要求されます(会社法796条3項ただし書)。また、そうした場合でなくても、存続会社が簡易合併の手続を選択するか否かは自由であり、強制されるものではありません。

略式合併

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 吸収合併の当事会社の一方が、他方当事会社(従属会社)の総株主の議決権の10分の9以上を有するときは(特別支配会社、会社法468条1項)、手続の簡素化の観点から、従属会社が消滅会社になる場合でも(会社法784条1項)、存続会社になる場合でも(会社法796条1項)、従属会社における合併承認の株主総会決議は要求されません。
 右の要件が満たされるときでも、(1)消滅会社である従属会社が公開会社であって、その株主に対し譲渡制限株式等(会社法783条3項、会社規則186条)が交付される場合(会社法784条ただし書)、または、(2)存続会社である従属会社が全株式譲渡制限会社であって、株式の交付を行う場合には(会社法796条1項ただし書)、略式合併の手続をとることはできず、株主総会決議が要求されます。
 略式合併により株主総会決議が不要となる場合には、不満な株主には株式買取請求が認められています(会社法785条、786条)。また、合併の差止請求を認める制度が新たに導入され、消滅会社の株主は、法令もしくは定款違反の場合または対価が著しく不当な場合には、合併の差止を請求することが認められます(会社法784条2項)。他に、無効の訴えや、損害賠償請求等も可能です。

事業譲渡の手続

 事業譲渡は合併のような包括承継ではなく、通常の取引法上の契約なので、契約で決めた範囲の財産が個別的に移転し、個々の財産の移転手続が必要となってくるのが特徴です。

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譲渡会社の手続

 取締役会設置会社では、重要な財産の処分には取締役会の決議が必要ですが(会社法362条4項1号)、全ての会社において、事業の全部の譲渡および事業の重要な一部の譲渡の場合には、原則として株主総会の特別決議が必要となります(会社法467条1項2号・2号、309条2項11号)。
 ただし(1)事業の重要な一部の譲渡であって、譲渡により譲渡す資産の帳簿価額が総資産額として法務省令(会社規則134条)で定める方法により算定される額の5分の1を超えない場合(会社法467条1項2号かっこ書、定款で基準を厳格化できる)、(2)略式手続すなわち譲受会社が特別支配会社である場合(会社法468条1項)には株主総会の特別決議は不要です。
事業譲渡等に反対する株主(上記(1)の特別決議が不要な場合を除く)には、株式買取請求権が認められています(会社法469条1項)。
 株主総会決議を要する当事会社は、効力発生日の20日前までに、株主に対して、事業譲渡をする旨を通知しなければなりません(会社法469条3項)。公開会社である場合又は株主総会で事業譲渡契約等の承認を受けた場合はこの通知を公告に代えることができます(会社法469条4項)。
 なお、事業譲渡においては、譲渡会社は、全部譲渡の場合でも当然には解散せず、会社債権者の承諾を得て譲受人に免責的債務引き受けをさせない限り、債務を負い続けるので、会社債権者保護のための手続は設けられていません。

譲受会社の手続

 取締役会設置会社では、重要な財産の譲受けには取締役会の決議が必要ですが(会社法362条4項1号)、全ての会社において、他の会社の事業の全部の譲受けの場合には、原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法467条1項3号、309条2項11号)。
 ただし、(1)略式手続すなわち譲渡会社が特別支配会社である場合(会社法468条1項)、(2)簡易手続すなわち、譲受会社の事業の全部の対価として交付される帳簿価額が譲受会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を超えない場合(会社法468条2項、定款で基準を厳格化できる)には、株主総会の特別決議は不要です。
 反対株主に株式買取請求権が認められます。
 一定規模以上の事業譲受け等の場合には、効力発生日30日前までに公正取引委員会へ届出をすることが必要です。

会社分割の手続

 会社分割手続は、吸収分割契約の締結又は新設分割計画の作成に始まり、効力発生日後6か月間の事後開示で終わる一連の行為からなる手続です。会社分割手続には、多数の利害関係者が関与し、各手続の瑕疵は会社分割無効の原因となるため、会社分割手続の実行に当たっては細心の注意が必要になります。

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吸収分割契約の締結又は新設分割計画の作成

 吸収分割においては、当事会社は吸収分割契約を締結しなければなりません(会社法757条)。吸収分割契約の締結は重要な業務執行に当たるのが通常ですので、取締役会設置会社においては取締役会決議が必要です(会社法362条4項)。各当事会社においては、取締役会設置会社以外の場合には取締役の過半数の決定により(会社法348条2項)、取締役会設置会社の場合には取締役会決議を経て、代表取締役が吸収分割契約を締結します。ただし、委員会設置会社が簡易分割や略式分割を実施する場合は、取締役会決議により、吸収分割契約及び新設分割計画の内容の決定について執行役に委任することができます(416条4項17号かっこ書・18号かっこ書)。
 新設分割においても、吸収分割と同様に新設分割計画の作成が求められます(会社法762条)。

事前開示

 会社分割は当事会社の株主及び債権者に重大な影響を与えることから、株主及び債権者の判断に資するため、所定の書類を事前に開示することが要求されています。
 吸収分割の場合、吸収分割会社は吸収分割契約備置開始日から、吸収分割の効力発生日後6か月を経過する日までの間、吸収分割契約の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法787条2項、会社規則183条)。
 一方、新設分割の場合、新設分割会社は新設分割計画備置開始日から、新設分割設立会社成立の日後6か月を経過する日までの間、新設分割計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置くことが求められています(会社法803条1項、会社規則205条)。
 吸収分割承継会社の場合も、吸収分割契約備置開始日から、効力発生日後6か月を経過する日までの間、同様の開示が求められますが(会社法794条、会社規則192条)、新設分割設立会社については、事後開示のみで足ります。

吸収分割契約又は新設分割計画の承認決議

 吸収分割においては、吸収分割会社及び吸収分割承継会社は効力発生日の前日までに、株主総会で吸収分割契約の承認を得る必要があります(会社法783条1項、795条1項)。
 新設分割においては、新設分割会社は株主総会の決議によって、新設分割計画の承認を得る必要があります(会社法804条1項)。一方、新設分割設立会社については、新設分割設立会社が成立することが効力発生の前提となりますので、新設分割設立会社の「成立の日」すなわち設立登記の日をもって、新設分割会社の権利義務を承継することになります(会社法49条、764条1項)。
 また、株主総会の決議は原則として特別決議を必要とします(会社法309条2項12号)。

株主の株式買取請求

 会社分割が承認されれば、反対株主は会社分割を阻止することができませんが、反対株主は会社に対して公正な価格で、自己の有する株式の買取を請求することができます(会社法785条1項、797条1項、806条1項)。

新株予約権者の新株予約権買取請求

 株主の株式買取請求と同様に、分割会社の新株予約権の新株予約権者は、分割会社に対して、自己の有する新株予約権を公正な価格で買取ることを請求することができます(会社法787条1項、808条1項)。

債権者保護手続

 会社債権者は、債務者である分割当事会社の分割条件によっては不利益を受けるおそれがあります。そこで、分割当事会社は、(1)会社分割をする旨、(2)承継会社又は分割会社の商号及び住所、(3)分割会社及び承継会社の計算書類に関する事項、(4)債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報で公告し、かつ、知れている債権者には、各別に催告をしなければなりません(会社法789条2項、799条2項、810条2項)。
 また、会社分割においては、労働者の権利を保護するため、一定の条件を満たす労働者や労働組合に対して通知することを義務づけています。

新株予約権証券提出手続

 分割会社が新株予約権証券を発行している場合で、分割対価として吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の新株予約権を交付する場合、分割の効力発生日までに新株予約権証券を提出しなければならない旨を、効力発生日の1か月前までに公告し、かつ、当該新株予約権者及びその登録新株予約権質権者には、個別に通知しなければなりません(会社法293条1項4号・5号)。

事後開示

 吸収分割の場合、吸収分割会社は吸収分割承継会社と共同して、吸収分割承継会社が承継した吸収分割会社の権利義務その他の吸収分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を、効力発生後遅滞なく作成するとともに、効力発生日から6か月間、本店に備え置くことが求められています(会社法791条1項1号・2項・3項1号、会社規則201条)。
 新設分割の場合、新設分割会社は新設分割設立会社と共同して、新設分割設立会社が承継した新設分割会社の権利義務その他の新設分割に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を、その成立の日後遅滞なく作成するとともに、新設分割計画の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録とあわせて、その成立の日から6か月間、本店に備え置くことが求められています(会社法811条1項1号、2項、会社規則209条)。
 新設分割設立会社も同様の作成及び開示が求められます(会社法815条2項、3項1号、会社規則212条)。

会社分割登記

 吸収分割及び新設分割のいずれの場合も、会社分割当事会社の本店所在地において会社分割登記が必要になります(会社法923条、924条)。

公正取引委員会等への届出

 会社分割には、独占禁止法による公正取引委員会への届出や、金融商品取引法による財務局長への届出が必要な場合があります。また、上場会社が会社分割決議を行った場合は、金融商品取引所への届出も必要になります。さらに、公益的要素の強い事業を営む会社については、事業法(銀行法第30条、保険業法第173条の6、鉄道事業法第26条等)に従い、監督官庁(主務大臣)が許認可を通じて会社分割を規制していることに注意する必要があります。

簡易分割・略式分割

 吸収合併の存続会社について簡易合併があるように、会社分割についても、分割会社または承継会社の株主に及ぼす影響が軽微なものについては、その会社の株主総会の承認決議なしに分割を行うことが認められています(簡易分割)。   
 また、吸収分割の一方の当事者会社が他方の特別支配会社である場合には、略式合併と同様に、従属会社である当事会社における株主総会の分割承認決議は要求されません。

現物出資の手続

会社設立時において現物出資を行う場合

 発起人において、まず現物出資をする者の氏名または名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数を定款に記載することになります。
次に、例外として定められた場合を除き、発起人において、定款の認証後遅滞なく、現物出資に関する事項について調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任を申し立てることになります(会社法33条1項)。
 検査役には、通常、弁護士が選任され、必要な調査を行い、裁判所に調査結果を提出して報告を行います(会社法33条4項)。
 裁判所において、当該報告を受け、現物出資に関する事項を不当と認めた場合は、かかる定款の規定を変更する決定をすることになります(会社法33条7項)。
発起人は、変更決定確定の日から1週間以内に限り、設立時発行株式の引受を取り消すことができます(会社法33条8項)。

募集株式発行時において現物出資を行う場合

 募集株式の発行に際して現物出資を認める場合、まず現物出資である旨並びに当該財産の内容及び価額を定める必要があります(会社法199条1項3号)。
次に、例外として定められた場合を除いて、設立時と同様に検査役の検査を受けることになります(会社法207条)。
 裁判所は、検査役の調査結果の報告を受けた結果、募集事項に定められた現物出資財産の価額を不当と認めた場合は、これを変更する決定をすることになります(会社法207条7項)。
この場合、当該引受人は、変更決定確定の日から1週間以内に限り、当該募集株式の引受を取り消すことができます(会社法207条8項)。

株式交換の手続

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株式交換契約締結まで

デューデリジェンスの実施、株式交換契約の内容確定

 デューデリジェンスの結果、対象会社と株式交換を行うことが決まれば、次に対象会社の株式を取得する対価として、対象会社の株式1株に対して自己株式何株を交付するか(あるいはいくらの現金を交付するか)等株式交換契約の内容を決定することとなります。

取締役会の承認

 このようにして株式交換契約の内容が確定すると、両当事会社において株式交換契約締結について、取締役会の承認等を得る必要があります(会社法362条4項)。取締役会設置会社においては、取締役会決議、取締役会設置会社以外の会社(委員会設定会社を除く)においては、取締役の過半数による承認が必要となります。株式交換契約の締結は「重要な業務執行」に当たるのが通常ですので、執行役への委任はできません。
 両当事会社で株式交換契約の締結が承認された後、株式交換契約を締結します(会社法767条)。

株式交換契約締結から効力発生日まで

事前開示書類の備置

 以下では、主に株式交換独自の手続について説明しますが、当然、株主総会の準備もこれから述べる手続と並行して行う必要があります。
 株主が株式交換に賛成するべきか否かの判断資料、債権者が株式交換に対して異議を述べるべきか否かの判断資料とするため、両当事会社は、通常、株式交換の承認を求める株主総会の2週間以上前から株式交換の効力発生後6カ月を経過する日まで、所定の書類を両当事会社の本店に備え置かなければなりません(事前開示書類の備置。会社法782条1項、794条1項)。
開示すべき事項は以下のとおりです(会社法施行規則184条1項)。
(1)交換対価の相当性に関する事項
(2)交換対価について参考となるべき事項
(3)株式交換に係る新株予約権の定めの相当性に関する事項
(4)計算書類等に関する事項
(5)債権者保護手続において異議を述べることができる債権者がいる場合、株式交換が効力を生ずる日以後における完全親会社の債務(当該債権者に対して負担する債務に限る)の履行の見込みに関する事項

株主に対する通知

 そして、後述する反対株主の株式買取請求権行使の機会を保障するため、株式交換の効力発生日の20日前までに株主に、株式交換する旨等を通知する必要があります(会社法785条3項、4項)。
 なお、株式交換に関する株主総会を開催する場合にも、通常の株主総会同様、株主に対する招集通知を発送する必要があり、招集通知において、株式交換に係る議案の内容、株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得に係る議案の内容を記載しなければならないほか(会社法298条1項5号、299条4項、会社法施行規則63条7項ル、ヲ)、書面によって議決権を行使することができることとした場合には、招集通知に際して交付する株主総会参考書類(会社法301条)の中で以下の事項について記載しなければなりません。
(1)株式交換を行う理由
(2)株式交換契約の内容の概要
(3)完全子会社の場合、株主総会の招集を決定した日における事前開示事項の概要
(4)完全親会社の場合、株主総会の招集を決定した日における事前開示事項の概要

債権者に対する株式交換に関する通知・公告

 また、後述するとおり、株式交換において債権者保護手続が必要となるのは例外的な場合ですが、債権者保護手続が必要な場合には、株式交換の効力発生日より前に、異議申述期間を1か月以上もうけて、株式交換に関する公告・催告を行わなければなりません(会社法789条2項、799条2項)。

株主総会決議
   

 株式交換を行うには、原則として、株式交換の効力発生日の前日までに、両当事会社において、株主総会の特別決議による承認を得なければなりません(会社法783条1項、795条1項、309条2項11号)。

債権者保護手続

 株式交換は、両当事会社は独立の法人格を維持するため、債権者保護手続が必要となるのは以下の例外的な場合に限られています(会社法789条1項3号、799条1項3号、768条1項4号ハ、)。  
 すなわち、完全子会社となる会社においては、株式交換契約において、新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合、完全親会社となる会社においては、完全子会社となる会社の株式を取得する対価として株式(その他これに準ずるもの)のみを交付する場合以外の場合には、会社の資産に変動が生じるので例外的に債権者保護手続が必要とされています。
 債権者が異議を述べた場合、株式交換をしても債権者を害する恐れがない場合を除いて、両当事会社は、当該債権者に対して債務を弁済する等しなければなりません(会社法789条5項、799条5項)

反対株主の株式買取請求権

 前述のとおり、株式交換を用いると、一部の株主が株式交換に反対した場合でも、株主総会決議を経ることで、対象会社の全株式を強制的に取得することができます。
 そこで、株式交換に反対する株主には、投下資本の回収の機会を保証するため、会社に対して自己の有する株式を公正な価格で買取るべきことを請求することができる権利(反対株主の株式買取請求権)が認められています(会社法785条、797条)。 
 この権利を行使するためには、株式交換を承認する株主総会に先立って、株式交換に反対である旨を会社に対して通知し、かつ当該株主総会において、株式交換に対して反対する旨の議決権を行使する必要があります(当該株主総会において議決権を行使することができない株主については、この手続は必要ありません。また、簡易株式交換の様に株主総会決議が不要である場合には、すべての株主が反対株主となることができます)。
 なお、買取価格の協議が整わなかった場合には、反対株主あるいは会社は、裁判所に対して買取価格決定の申立てをすることが可能です(会社法786条2項、798条2項)。

株券及び新株予約権提出手続

 株式交換により完全子会社となる会社が株券発行会社(会社法117条6項)であって現実に株券を発行している場合、効力発生日までに株券を提出しなければならない旨を、効力発生日の1か月前までに公告し、かつ株主及び登録株式質権者に対して各別に通知しなければなりません(会社法219条1項7号)。提出された株券は、効力発生日に無効となります(会社法219条3項)。
 このことは、株式交換により完全子会社となる会社が、新株予約権証券を発行している場合で、株式交換の対価として、完全親会社となる会社の金株予約権を交付する場合も同様です(会社法293条1項6号)

効力発生日以降

 両当事会社の株主総会において、株式交換契約の締結が承認されると、株式交換契約に定めた日に効力が発生します(会社法769条1項2号)。
株式交換完全子会社と株式交換完全親会社は、共同して、所定の事項を記載した書面を、株式交換の効力発生後遅滞なく作成し、効力発生日から6か月間、本店に備え置く必要があります(会社法791条1項2号、811条1項2号)。
 事後開示書類に記載すべき事項は以下のとおりです。
(1)株式交換が効力を生じた日
(2)完全子会社における株式買取請求、新株予約権買取請求、債権者保護手続の経過
(3)完全親会社における株式買取請求、債権者保護手続の経過
(4)株式交換により完全親会社に移転した完全子会社の株式の数
(5)その他株式交換に関する重要な事項
 これらの書類に関しては、株式交換完全親会社の株主及び債権者(会社法801条6項)並びに株式交換の効力発生日に株式交換完全子会社に株主及び新株予約権者であった者(会社法791条4項、811条4項)の閲覧及び謄本・抄本交付請求に応じる必要があります。
 株式交換に伴い、株式交換完全親会社の資本金の額や発行株式総数を変更した場合、その旨の登記を効力発生日から2週間以内に行う必要があります(会社法921条)。

略式株式交換・簡易株式交換

 株式交換以前から親子関係が存在する場合において、親会社が子会社の特別支配会社である場合(会社法468条1項、会社法施行規則136条。典型的には、親会社が子会社の総株主の議決権の90%以上を保有している場合)、両会社における株主総会決議の承認が不要となる略式株式交換の手続をとることができる場合があります。
 また、(1)株式交換によって完全親会社となる会社が完全子会社となる会社に対して交付する株式の数に1株当たり純資産額を乗じて得た額と、(2)株式交換よって完全親会社となる会社が完全子会社となる会社に交付する社債損他財産合計額が完全親会社となる会社の準遺産額の5分の1を超えない場合には、完全親会社となる会社に及ぼす影響が小さいので、完全親会社となる会社での株主総会決議は不要となる簡易株式交換の手続をとることができる場合があります。

株式移転の手続

 株式移転は、親会社となる会社を新設する点で新設型の組織再編行為であり、新設合併や新設分割に近いことから、これらの制度とともに「新設合併等の手続」(会社法803条?)において、手続が規定されています。

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株式移転計画

 株式移転を行うには、まず株式移転計画を作成する必要があります(会社法772条2項)。
 株式移転計画書には、(1)完全親会社の定款等組織に関する事項、(2)親会社が発行する株式に関する事項、(3)親会社が交付する株式以外の財産に関する事項、(4)親会社が発行する新株予約権に関する事項を定める必要があります。
 なお、株式交換と異なり、完全親会社の株式以外の財産を対価とすることは認められていません。

事前開示書類

 株式移転によって完全子会社となる会社は、一定の事項を記載した書面または電磁的記録(事前開示書類等)を本店に備え置く必要があります(会社法803条)。

 事前開示書類は、下記(1)から(4)のいずれか早い日から6ヶ月間、備え置く必要があります。
(1)株式移転の承認に関する株主総会の2週間前の日
(2)反対株主の株式買取請求に関する通知または公告のいずれか早い日
(3)新株予約権買取請求に関する通知または公告のいずれか早い日
(4)債権者異議手続の公告または催告のいずれか早い日

 事前開示すべき事項は、次の(1)から(7)になります(会社法803条1項、会社規則206条)。

(1)株式移転計画の内容
(2)株式移転に際して、完全子会社の株主に対して交付する完全親会社の株式、社債及びそれらの割当、各々の相当性に関する事項
(3)株式移転に際して、完全子会社の新株予約権者に対して交付する完全親会社の新株予約権及びその割当、各々の相当性に関する事項
(4)他に完全子会社となる会社がある場合における、当該会社の計算書類等の内容
(5)最終事業年度の末日後に生じた重要な事象等の内容
(6)株式移転について異議を述べることができる債権者がいる場合、完全親会社における債務の履行の見込みに関する事項
(7)株式移転の効力が生ずるまでの間に、上記(1)から(6)の事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項

株主総会の承認

 株式移転には、略式・簡易組織再編の規定はなく、完全子会社の株主総会における特別決議が必要となります(会社法804条1項、309条2項12号)。
なお、株式移転がある種類の株式の株主に損害を及ぼす恐れがあるとき(会社法322条1項13号)、株式移転についてその種類株主総会の決議事項とされているとき(会社法323条)は、当該種類株主総会での特別決議が必要となります。

債権者保護手続

 完全子会社が、その新株予約権付社債を株式移転計画に従って完全親会社に承継させる場合には、当該新株予約権付社債の社債権者について債権者保護手続を採る必要があります(会社法810条1項3号)。この場合、1ヶ月以上の期間を定めてその期間内に意義を述べることができる旨官報に公告し、かつ個別に催告することが必要です(会社法810条2項)。

株式買取請求権等

 完全子会社の株主については、反対株主の株式買取請求権が認められています(会社法806条1項)。
 完全子会社の反対株主は、会社に対し、自己の保有する株式を「公正な価格」で買い取ることを請求できます。請求できるのは、(1)当該株式移転決議を行う株主総会に先立ち、株式移転に反対する旨会社に通知し、総会において株式移転に反対した株主と、(2)当該株主総会において議決権を行使できない株主になります。
 完全子会社では、株式移転をする旨等を、株主総会決議の日から2週間以内に通知か公告することが必要です(会社法806条3、4項)。
 株式買取請求権は、株式点の効力発生日の20日前の日から効力発生の前日までの間に、会社に対し、買取請求を求める株式の数を明らかにして行う必要があります。
 買取請求権行使後、株主による請求の撤回は、会社の承諾ある場合の他、価格について協議が整わないにもかかわらず裁判所に対する価格決定の申立が株式移転の効力発生日から60日以内になされない場合以外は認められません(会社法806条6項、807条3項)。
 買取価格について合意が成立した場合、株式移転の効力発生日から60日以内に買取代金の支払いをしなければなりません。
 買取価格について、株式移転の効力発生日から30日以内に合意が成立しない場合は、株主・会社は、その期間の満了の日の後30日以内に、裁判所に対し、買取価格の決定を申し立てることができます(会社法807条2項)。

株式移転の効力

 株式移転は、完全親会社の成立の日、すなわち設立登記の日に効力を生じることになります(会社法774条1項)。

事後整備書類

 完全子会社と完全親会社は共同して、株式移転により完全親会社が取得した完全子会社の株式の数、株式移転が効力を生じた日、完全子会社における株式買取請求、新株予約権買取請求及び債権者保護手続の各手続の経過、その他株式移転に関する重要な事項(会社規則210条)について事後開示書面に記載し、完全親会社成立の日から6ヶ月間本店に備置しなければなりません。

株式移転無効の訴え

 株式移転の無効については、完全親会社と完全子会社を被告として、株式移転の効力が生じた日から6ヶ月以内に提起する方法によってのみ主張することができます(会社法828条1項12号、834条12号)。
 提訴権者は、完全子会社の株主等(株主、取締役、監査役、清算人、執行役)であった者並びに完全親会社の株主等となります(会社法828条2項12号)。