企業再生とは、様々な要因により経営に行き詰まった企業を立て直し、再生させることを言います。

 バブル経済崩壊以降、日本経済は低迷を続け、「企業(事業)再生」と言った言葉が頻繁に聞かれるようになりました。
 バブル経済崩壊は、日本の土地および株式の価格の暴落をもたらし、その結果、金融機関が企業に対して有していた貸付金について大幅な担保割れが生じ、景気低迷による企業業績の悪化とあわせ、深刻な不良債権問題が発生しました。企業の信用の中核を担っていた土地や株式の価格の下落は、企業に多額の含み損を生じさせ、信用低下を招くこととなり、過剰債務の問題を生じることとなりました。
 一向に回復の兆しを見せない景気低迷の中、会計ルールのグローバル化を目指して平成12年3月期からスタートした一連の会計ビッグバンは、土地、株式の含み損の処理、退職給付と言った将来債務の認識させることとなり、多くの企業のバランスシートにおいて資本の部を悪化させる原因となりました。
 このため、多くの企業が、過剰債務・資本不足の問題を抱えることとなり、結果的に、相当数の企業が倒産に追い込まれることになりました。

 このような企業の倒産は、当該企業の役員・従業員だけの問題に止まらず、取引先、投資家にも影響を及ぼし、連鎖倒産を引き起こすことにより、地域経済を停滞させ、新たな起業を困難にするという負の連鎖を巻き起こすことになります。
 これは社会的に見ても極めてマイナスが大きいと言わざるを得ません。
 そこで注目すべきなのが、倒産に至る前に、このような窮境企業を再生させる企業再生という概念・手法となります。
 この企業再生のポイントは、過剰債務の解消とキャッシュフローの改善にあります。

 さて企業が過剰債務に陥ると、本来、事業の再生産のために振り向けるべき投資資金を金利と元本返済に費消されてしまうため、本業が劣化し、衰退の道を辿ることとなります。
これを防ぐためには、過剰債務部分の返済や利払いを軽減する財務リストラが必要となります。
 過剰債務を解消するためには、債権放棄やDES(デット・エクイティ・スワップ)、DDS(デット・デット・スワップ)或いは民事再生や会社更生を始めとする法的整理といった、いわゆる「デット・リストラクチャリング」を行う必要があります。

 一方、棄損したバランスシートを改善するには、負債の部分だけでなく、資本の部分の再構築「エクイティ・リストラクチャリング」を行う必要もあります。
 このため既存の株式について減資し、併せて増資を行う増減資スキームが、特に法的整理の場面において、100%減資+第三者割当増資という形で実施されてきました。
 また私的整理の場面であっても、株主責任の明確化、増資引受先の確保、DESにあたっての既存株主の希釈化といった観点から、減資が行われてきました。

 他方で利益が上がらずキャッシュフローが改善しなければ、企業を再生することはできません。 キャッシュフローを改善するためには、不採算事業を徹底的に見直し、事業ポートフォリオの再構築することにより、経営資源の選択と集中を図る必要があります。
 具体的には、営業譲渡・会社分割によって事業の一部を他の会社に移転させたり、MBOにより、子会社や企業の一部門を独立させるといったM&A手法を活用することで、事業の選択と集中を高め、優良部門と不良部門を切り分ける、いわゆる「アセット・リストラクチャリング」が必要となる場合もあります。

 このような企業再生を後押しする法制度の整備も進んできました。
 平成18年5月に施行された会社法においては、合併・会社分割の等の対価の柔軟化や、簡易組織再編の要件の緩和、略式組織再編の新設、組織再編手続の明確化と言った事業再編に関する規定の整備が行われました。
 また、株式制度の整備やDESの場合における検査役調査・専門家証明書の廃止など、円滑に事業再編を進めるための規定も整備されました。
倒産法制では、平成12年4月より、旧和議法に代わる再建型倒産手続法として、民事再生法が施行され、手続の開始要件の緩和、再生計画認可のための多数決要件の緩和などの結果、多くの企業再生に利用されるようになりました。
 平成13年9月には、全国銀行協会・経済団体連合会などによって構成される研究会において、企業の再建及びそれに伴う債権放棄の原則として、「私的整理のガイドライン」が策定・公表され、企業再生実務にも大きな影響を与えていますし、平成15年4月からは、より手続の迅速化・使いやすさを目指して、会社更生法も改正されています。

企業再生の手法(総論)

 過剰債務を圧縮するツールとしての企業再生の手法ですが、大きく分けて、私的整理と法的整理の二種類に分かれます。
 私的整理とは、再生企業において、合理的な再建計画を作成して債権者と交渉し、個別に債権カットの同意を得ることで過剰債務を圧縮していく手法です。これに対し、法的整理は、個別の債権者の同意ではなく、裁判所の監督の下、債権者の多数決によって、法律に基づき、債権のカットを受ける手法です。
 私的整理、法的整理には、それぞれメリット・デメリットがありますので、再生を目的とする企業の状況に合わせて、いずれの手法によるべきか検討することになります。

私的整理の特徴・メリット・デメリット

 私的整理は、基本的には個別交渉による債権カットであり、通常、金融機関等が主導して行うことになります。
 金融機関等による任意の債権放棄により、過剰債務を返済可能な程度にまで圧縮し、これによって生じる債務免除益によって資本の欠損を解消し、残債務を分割弁済とすることによって企業の再建を図ることになります。
 このため私的整理の対象となる債務は、通常、金融機関等が有する貸付債権に限られ、一般商取引債権者に対する買掛金債務等は対象から除外されるので、私的整理の場合、連鎖倒産が起きる可能性が少なく、金融機関側にとっても、予想外の損失発生という事態に陥らずに済むといった利点があります。
 法的整理を行うこととなると、一般に「倒産」というイメージがつきまとい、世間的にも信用を失う危険が高い上、一般商取引債権者を巻き込むこととなり、信用力・企業価値を毀損する程度も大きいと言えます。
 むしろ収益力が相当程度あり、バランスシートの痛みが比較的軽い企業であれば、私的整理を選択することにより、信用力・企業価値を維持しながら、事業を再建することも可能となります。
 私的整理にあたっては、通常、資金面、人材面、取引面において、メインバンクの全面的支援がなされる一方、経営陣の退陣等による経営責任の明確化がなされ、不採算部門の閉鎖、子会社・関係会社の整理等のリストラ・事業再編が実施されることになります。
 近時は、債権放棄に代えて、DESやDDSが活用されるケースが増加しています。

 私的整理の最大のメリットは、企業価値の維持にあります。上述したとおり、法的整理には「倒産」としての相当なマイナスイメージがつきまといます。仕入先や消費者によって営業が支えられている小売業や、ブランドイメージの毀損が売上の減少に直結する企業にとって、法的整理は、回復不可能な事業価値の劣化を招く危険があります。
一般商取引債権者を巻き込む法的整理と異なり、私的整理は少数の金融機関によってスキームが策定・実行されるため、一般商取引債権者に直接の影響はありませんし、「倒産」と呼称されないため、ブランドイメージの毀損の程度は比較的小さいと言えます。
 私的整理はあくまでも合意を基礎に債務の圧縮を進めるものですので、関係者の合意により柔軟な再建計画を策定できる点も私的整理のメリットです。
 一方、私的整理による場合は、一般商取引債権者に対する債務が債権カットの対象でない上、次に述べるとおり債権放棄の額自体が低額とならざるを得ないという事情があります。
 すなわち、税務上、損金計上が認められるのは、対象企業再建のために必要最低限度の債権放棄だけであり、これを超える債権放棄については寄付金課税の対象となりかねないという、税務上の損金計上の問題がまず挙げられます。次に、残債務の弁済期間が長期化するため、そのリスクを見込んだ放棄額となってしまう点が挙げられます。更に、みだりに債権放棄を行うとなると、善管注意義務違反による株主代表訴訟のリスクも生じます。
 これらの事情から、私的整理における債務の圧縮額は、法的整理と比較すれば、どうしても小さくならざるを得ず、この点は、私的整理のデメリットとなります。
また私的整理は、あくまでも関係金融機関の合意をベースとする以上、合意が得られなければ成立困難であるところ、必ずしも全関係者の合意を取り付けることが容易ではない点もデメリットです。
 このとおり、私的整理は、一見、債権を放棄するだけと簡単なようですが、現実には、関係当事者間において、非常に難しい調整が必要となってきます。
 このため、私的整理ガイドラインが整備される一方、整理回収機構や中小企業再生支援協議会といった公的機関が私的整理を側面から支援する体制が生まれています。

法的整理の特徴・メリット・デメリット

 私的整理にチャレンジしたにもかかわらず、債権者間で意見が対立するなど再建計画について支持が得られない場合、再生企業に対する金融支援が打ち切られ、再生企業としては、法的整理手続を選択せざるを得ないことになります。
 この法的整理手続は、会社の清算を目的とする清算型手続(破産・特別清算)と、企業・事業の再建を主たる目的とする再建型手続(民事再生・会社更生)とに分けられます。

 法的整理手続の最大のメリットは、(1)多数決原理によって、(2)債務超過を解消するだけの十分な債務削減が可能となり、抜本的にバランスシートを健全化できる点です。
 一方法的整理手続のデメリットは、(1)債権者平等の制約から、一般商取引債権者の債権についてもカットの対象となり、取引先から取引の継続が拒絶され得る、(2)「倒産」手続に入ったというマイナスイメージによる顧客離れ、(3)信用不安による短期的な損益計算の悪化が挙げられます。また、(4)連帯保証人に責任追及が及ぶため、場合によっては連帯保証人についても法的整理を行わなければならない可能性がある点も、デメリットと言えるでしょう。

私的整理ガイドラインの概要

 私的整理ガイドラインとは、平成13年9月に全国銀行協会や日本経済団体連合会が中心となって構成された私的整理に関するガイドライン研究会がまとめ、公表されたものです。法的な強制力・拘束力はありませんが、紳士協定として位置づけられています。
 この私的整理ガイドラインは、法的整理によらずに、債権者と債務者の合意に基づき債権放棄を行うための手続規定を設け、私的整理についての基準を明確にし、不良債権処理を促進することを目的として策定されました。
 私的整理ガイドラインは、再建計画の内容について(1)3年以内の実質的債務超過解消・経常利益黒字化、(2)経営者の退任、(3)株主責任としての減資などを盛り込むことを求めるなど、法的整理に準じた厳しい内容を定めています。
 その一方、私的整理ガイドラインに従って債権放棄を行った金融機関に対しては、原則として無税償却が認められることになっており、これが金融機関にとって最大のメリットとなります。
 ただ実際には、私的整理ガイドラインの求める条件が厳しすぎるため、利用されたケースは数十社程度に止まっています。
 なお全国銀行協会は、平成14年11月、私的整理ガイドラインを弾力的に運用できるように、(1)業界の特殊事情等合理的な理由のある場合は、債務超過解消・経常黒字転換までの期間を延ばすこと、(2)経営責任のない経営者や中小企業の場合、経営者を留任できる、(3)中小企業で今後の増資が困難な場合、減資を求めない、と言ったことを、合理的な例外として確認しています。
今ではこの私的整理ガイドラインは、整理回収機構や中小企業再生支援協議会による企業再生にあたっても、再建計画を検証する指針として利用されています。

整理回収機構の概要

 株式会社整理回収機構は、もともと特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法第3条に基づき預金保険機構が100%出資して設立された住宅金融債権管理機構(住管機構)と整理回収銀行が合併して出来た金融機能の再生及び健全化を行うための銀行・債権回収会社です。

 整理回収機構もまた、平成13年6月の「骨太の方針」、「改革先行プログラム」、平成16年12月の「金融改革プログラム」により、企業再生業務に取り組んできました。
 整理回収機構は、第三者の立場或いは債権者の立場で、基本的には私的整理ガイドラインに沿いながら、(1)再建計画の検証、(2)金融機関債権者の利害調整、(3)再建計画への同意取付、といった形で企業再生に関与しています。

 整理回収機構は、通常、メインバンクからの依頼に基づき業務委託を受ける形で、企業再生に関与することになりますが、公正中立な立場を条件としており、メインバンクの利益を代表するわけではありません。
 但し、どのような案件でも取り扱うわけではなく、(1)再建の可能性があること、(2)企業再生をすることの経済的合理性があること、(3)債務者企業の誠意・意欲があること、(4)経営者責任、株主責任が明確であること、が基本的な条件となります。

 再建計画のスキーム策定、金融機関の利害調整については、基本的に私的整理ガイドラインを指針として行いますが、ガイドライン手続との一番大きな違いは、メインバンクではなく、整理回収機構が、公正中立な立場から、個別に各金融債権者と折衝して利害を調整していく点です。

 整理回収機構のスキームにおいて、平成17年度税制改正による評価損益の計上や期限切れ欠損金の優先利用といった優遇措置の適用を受けるには、整理回収機構内の企業再生検討委員会で再建計画検証を受けること、「RCC企業再生スキーム」として公表されている諸手続に準拠していることが条件となります。
 なお本来、債権放棄を行う金融機関が1行しかない場合には、政府系金融機関及び整理回収機構が債権放棄をする場合にしか適用は認められませんが、整理回収機構の信託機能やサービサー機能を活用することで、民間金融機関1行だけでの債権放棄についても適用が認められることになります。
 なお取引継続を望まない金融機関については、RCC再編ファンドを利用した債権の買取も有益です。
 再建計画のモニタリングについては、基本的にメインバンクが行い、間接的な報告を求める程度になります。

 整理回収機構が、債権者の場合の企業再生については、経営コンサルを利用して経営改善を図ったり、財務・事業DDを再生支援協議会に依頼して共同するなど、様々な手法を駆使して企業再生を図っていくことになりますが、私的整理が困難な場合には、整理回収機構自らが、債権者として法的整理を申し立てるケースもある点などは、特徴的な処理と言えるでしょう。

中小企業再生支援協議会の概要

 中小企業再生支援協議会とは、産業活力再生特別措置法によって定められる、中小企業の再生を支援するための機関で、現在、全国47都道府県に設置が完了し、国としての中小企業再生支援業務を行っています。
 中小企業再生支援協議会は、経済産業大臣が商工会議所等を認定支援機関として認定し、その中に設置されています。

 中小企業再生支援協議会の特徴は、中小企業の代理人でも金融機関の代理人でもない、公正中立な第三者機関としての立場から、中小企業の再生計画の策定を支援するという点にあります。再生計画の策定は、中小企業、金融機関と利害関係のない弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士等の専門家による調査・分析に基づいて行われ、その内容は、債務者の自助努力、債権者の経済合理性、金融支援の相当性・妥当性・衡平性を勘案して行われます。

 再生計画における金融支援も、債権放棄を伴うものばかりではなく、単なるリスケジュールや、DDS、DES、M&Aを含む事業譲渡、再生ファンドの活用等、様々な取り組みが行われていますが、全国的には単なるリスケジュールのみの支援が大半となっています。
 概ねの再生計画の策定基準は、(1)概ね5年以内に実質債務超過を解消、(2)概ね3年以内の黒字化、(3)再生計画完了時における債務償還年数が概ね10年以下、(4)経営者責任、株主責任の明確化などになります。

 中小企業再生支援協議会を利用するメリットとしては、私的整理ガイドラインと同様、債権放棄額の損金算入や、債務免除益についての青色欠損金、期限切れ欠損金との損益通算が認められる点が挙げられますが、中小企業再生支援協議会を利用したからといって必ずしも認められるとは限らない点には注意が必要です。特に単独金融機関による債権放棄についての損金算入は、通常、難しいと思われます。
 なお、(1)2以上の金融機関による債権放棄、(2)再生計画検討委員会を設置し、私的整理ガイドラインに準じる、といった点を満たせば、平性17年度改正税制による評価損益の計上や期限切れ欠損金の優先利用といった優遇措置の適用を受けることも認められます。

 中小企業の再生においては、以下のような中小企業特有の様々な問題についての検討が避けられません。
 まず大半の中小企業については、経営者と株主が同一であるため株主からの統制が弱く、更に経営者は会社の債務について個人保証しているため、痛みを伴う企業再生を避ける傾向があります(オーナー問題)。
 また中小企業の取引金融機関は、メガバンク、地方銀行、信用組合、信用金庫、ノンバンク、政府系金融機関、信用保証協会、サービサーその他と、実に業態が様々であり、各々の体力だけでなく、金融常識から異なっているため、調整を図ることは極めて困難な作業になります(金融債権者問題)。
 更に中小企業については、そもそも事業基盤が弱く、わずかな信用不安が再生に支障をもたらす可能性もあり注意を要します(風評問題)。
 また中小企業はきちんとした監査を受けてこなかった結果、多かれ少なかれ、粉飾決算の問題を抱えており、再生計画におけるタックスプランニングに困難な問題を投げかけることもしばしばです(粉飾問題)。
 中小企業再生支援協議会によるスキームは、これら中小企業再生特有の問題に対応するため、私的整理ガイドライン手続を範としながらも、平性17年度改正税制の適用を求めるケースを除いて極めて弾力的に運用されており、また地元の商工会議所の中で行われていることもあって、地元の金融機関の協力が得られやすく、メイン寄せが生じにくい結果となっています。
 その他、中小企業再生支援協議会による企業再生スキームについては、公的機関としての性格から、中小企業のオーナーの説得に効果的であり、また信用保証協会の協力を得やすいというメリットもあります。

民事再生手続の概要

 民事再生手続は、「経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする」(民再1条)手続です。
 いわゆるDIP型の再建手続であり、通常は、従来の経営者が経営を続行し、再生手続並びに再生計画の適正等を監督するため、裁判所の監督命令により監督委員が選任されます。
民事再生手続は、破産手続の原因事実が生じる恐れがあるときや、弁済期にある債務の弁済を行うことで事業の継続に支障が生じる場合などに、裁判所に対する申立により開始されます。
 民事再生手続は、多数決による過剰債務の解消を、比較的迅速・簡易に手続を進められる点が特徴です。
 また、原則として従来の経営陣に経営権が残るため、申立への抵抗感が弱く、事業価値の劣化前に早期に事業再生が可能となる点も特徴です。
更に、会社法上の手続によることなく、再生手続の中で事業譲渡、減資を行えるというメリットもあります。

 民事再生手続では、一般優先債権・共益債権は随時弁済されますが、無担保一般債権(再生債権)は、再生計画によりカットされることになります。
一方、担保権(別除権)については、手続外で自由に行使できるのが原則であり、まずは担保権の実行により弁済を受けることになるのですが、例外として、担保権実行中止命令(民再31条)、担保権消滅請求制度(民再148条以下)の制度が設けられています。
このため担保の目的物が事業の継続に不可欠な資産であるような場合は、再生会社との協議により、評価額を分割弁済して物件を受け戻す協定を締結することが通常ですが、担保権者との交渉が上手く行かない場合に、担保権を実行されてしまう可能性がある点はデメリットと言えるでしょう。
 民事再生手続には、否認権の制度(民再135条)も整備されているため、監督委員・管財人が選任されている場合は、申立直近に流失した財産を取り戻すことも可能です。

民事再生手続とM&A

 民事再生手続においては、再生計画に定める方法の他、裁判所の許可を得て再生計画外にて事業譲渡を行うことも可能です。
 裁判所は、再生債権者や労働組合の意見を聞いた上で許可(民再42条1項)を検討することになります。
 また再生会社が債務超過の場合において、事業譲渡が事業の継続に必要である場合には、株主総会決議(会社467条1項)に代えて裁判所の許可(民再43条)により事業を譲渡することもできます。
 このように裁判所の許可を得て事業を譲渡することで、譲渡代金を再生債権者に対して早期に一括して弁済することも可能となります。
 なお民事再生手続においては、原則として資本の部に変更はなく、株主の権利もそのままですが、債務超過の場合、裁判所の許可を得れば、再生計画において株式を取得して資本金の額の減少に関する条項を定めることができ、これにより会社法の手続によらずに株式を会社で取得して消却・減資ができることになります(民再154条3項、161条、166条、183条4項)。
 この点、民事再生手続においても、経営責任を明確にするため一定の限度で減資が行われることが通常です。
 この点、再生会社が閉鎖会社であり、債務超過の場合は、事業継続に不可欠であり裁判所が許可することを条件に再生計画にて募集株式を引き受ける者の募集に関する事項を定めることができます(民再162条、166条の2)。これにより株主総会の特別決議といった会社法の手続によることなく、第三者割当増資の方法により円滑に、スポンサーに対する増資を行うことができるようになりました。
 一方、公開会社では、取締役会決議等、会社法上の手続(会社199条以下)により、第三者割当増資を行うことになります。
 従来、事業再生を支援するにあたって、経営責任明確化のため100%減資を行う場合には、株主総会特別決議により減資手続を行うと供に、株主全員の同意を得て株式を取得する他ありませんでしたが、会社法施行により、全部取得条項付種類株式の活用により、定款変更(種類株式の発行、全部取得条項の設定)と株主総会特別決議によってこれが行えることとなりました。
 再生計画の定めによる場合は、かかる手続も不要となるため、非常に円滑に100%減資を実施することができることになります。

会社更生手続の概要

 会社更生手続は、「窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的」(会社更生1条)とする手続です。
 いわゆる管理型の再建手続であり、通常、裁判所により更生管財人が選任され、経営陣の経営権及び財産の管理・処分権は失われ、更生管財人にこれらの権限が専属した形で手続が行われることになります。更生管財人については、法律家管財人、事業家管財人といった形で複数選任されることもあります。

 更生手続の期間は比較的長期間(1年?1年半)にわたりますが、多数決による過剰債務の解消を、強力に推し進めることができます。なお通常、更生管財人が選任されるため、経営陣にとっては申立に強い抵抗を感じさせるため、平成15年の改正後も、なかなか手続の利用が進まなかった経緯があります。
 もっとも、会社法上の手続によることなく、更生計画の中で多彩なM&A(事業譲渡、減資、増資、会社分割、株式移転・交換、第二会社方式、DES等)が行えること、更に担保付債権や優先債権も手続の中に取り込んで、その債権をカットすることも可能であることは、他の再建手続にはない大きな魅力です。
 このため、近時、東京地裁では、?経営陣に違法な経営責任がない?主導債権者が反対していない?スポンサーが了解している?手続きの遂行が損なわれない、と言った一定の要件の下、DIP型の更生手続を許容するようになっており、平成21年に入ってから、申立が急増しています。
 DIP型更生手続においては、更生会社代表者がそのまま更生管財人に選任されますが、更生管財人の業務の当否、更生計画案の当否について、経験ある弁護士を調査委員(会社更生125条)に選任してチェックしながら手続を進めて行くことになります。

 会社更生手続では、共益債権は随時弁済されますが、無担保一般債権(更生債権)のみならず、担保付債権(更生担保債権)をも含めた負債について、更生計画においてカットすることが可能です。
 更生手続においては、開始決定後の担保権の実行は禁止され、担保権者は、更生計画に従って弁済を受けることになります。これは民事再生手続にはない大きな特徴です。

 なお、民事再生手続と同様、担保権消滅制度も設けられています(会社更生29条、104条)。
会社更生手続では、更生計画についての関係人集会で、利害関係人(更生担保権者、更生債権者、株主)による審議を行い、その賛否について決議を行います。関係人集会での決議は、更生担保権の組、更生債権の組、株主の組において、それぞれ行われます(会社更生196条)。
 また株主の権利も、更生計画の認可により、更生計画によって認められた権利を除いて消滅することになります(会社更生205条1項、204条)。

 更に、更生会社は、更生計画において、資本金の額の減少、株式の取得及び消却、新株若しくは社債の発行、株式交換、株式移転、合併、会社分割、解散等をすることができます(会社更生174条?183条)。  通常は、更生計画の中で、100%無償減資が行われるとともに第三者割当増資がなされ、これにより資本の部のリストラクチャリングが行われることになります。

会社更生手続とM&A

 会社更生手続においては、更生計画の中で、(1)事業譲渡、(2)株式の取得及び消却、(3)増資(DESを含む)、(4)会社分割、(5)合併、(6)株式交換、株式移転、(7)新会社の設立、(8)解散を定めることができ、これらの手続については、会社法上の手続は不要となります(会社更生174条?183条、210条)。更にこの(2)?(8)については、会社更生法上、資本の変更登記、会社設立登記等の登録免許税について軽減措置が設けられています(会社更生264条)。

 これらにより、更生会社は、会社法の手続に制約されることなく、幅広くM&Aを行い、機動的・効果的に事業の再編成をすることが可能となるわけです。
 また会社更生手続においても、裁判所の許可を得れば、更生計画外において事業譲渡することが可能です(会社更生46条)。事業譲渡が事業の更生のために必要であると認められる場合、裁判所は、更生債権者、更生担保権者、労働組合等の意見を聞いた上で、事業譲渡を許可することができます。
 これにより更生会社において、民事再生と同様、事業譲渡代金を早期に一括して更生債権者等に弁済することも可能となります。なお更生会社が債務超過でない場合は、所定の株主保護手続が必要となります。

 更に会社更生手続においては、第二会社方式という特別なスキームが採用されることがあります。これは更生計画の中で新会社を設立し、更生会社の財産の全部または一部を新会社に承継させ、新会社において事業を継続していくスキームです(会社更生183条)。
 これによれば更生会社の「倒産」イメージを払拭できますし、許認可等の承継も可能である(会社更生231条)上、新会社設立登記にかかる登録免許税の軽減(会社更生264条7項、8項)、新会社への不動産の移転に関する不動産取得税の非課税化(地方税法73条の7第2号の4)と言ったメリットを享受することができるわけです。

特別清算手続の概要

 特別清算手続は、解散して清算手続に入っている株式会社について、その財産の状況により、(1)清算の遂行に著しい支障を来す事情があったり、(2)債務超過の疑いがあるときに、その株式会社等の申立または職権により開始される清算手続です。

 特別清算手続は、破産と同様に清算型の倒産手続ですが、清算会社が管理処分権を失わないDIP型手続であること、従来の会社代表者が清算人に就任できること、否認の制度がないこと、などの特徴が有ります。
 このような特別清算の特徴を活かし、申立前に事業を優良部門と不採算部門に切り分け、優良部門の事業のみを別会社に譲渡し、不採算部門だけを残して特別清算手続を行い、事業譲渡代金と事業譲渡の対象外の資産を換価した代金を債権者に弁済すると言った、特別清算手続を利用した再建スキームが立てられる可能性もあるでしょう。

私的整理

私的整理ガイドライン手続による私的整理の流れは以下のとおりです。

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私的整理ガイドラインに基づく私的整理手続

私的整理申出の準備

 私的整理ガイドラインによる私的整理手続は、どのような企業でも利用できるわけではなく、次の要件を満たした企業が対象となります。

(1)過剰債務を主因として経営困難な状況に陥っており、自力による再建が困難であること。
(2)事業価値があり(技術・ブランド・商圏・人材などの事業基盤があり、その事業に収益性や将来性があること)、重要な事業部門で営業利益を計上しているなど債権者の支援により再建の可能性があること。
(3)会社更生法や民事再生法などの法的整理を申し立てることにより当該債務者の信用力が低下し、事業価値が著しく毀損されるなど、事業再建に支障が生じるおそれがあること。
(4)私的整理により再建するときは、破産的清算はもとより、会社更生法や民事再生法などの手続によるよりも多い回収を得られる見込みが確実であるなど、債権者にとっても経済的な合理性が期待できること。

 対象企業が、私的整理ガイドラインに沿った私的整理を行うには、まず主要債権者に対して私的整理の申出を行う必要がありますが、この申出にあたっては、「債務者は主要債権者に対して、過去と現在の資産負債と損益の状況、及び経営困難な状況に陥った原因、並びに再建計画案とその内容などを説明するに足りる資料を提出する。」とされています。
 つまり、私的整理の申出を行おうと考えた場合、対象企業は、上述のとおり、(1)自力再生の困難性、(2)事業価値の存在と債権者の支援による債権の可能性、(3)法的整理手続による事業価値毀損の可能性、(4)債権者の経済的合理性が、それぞれ存することを説明するとともに、従前の損益状況、窮境原因、再生計画案を説明する資料を、予め準備しておかなければならない、ということになります。

 このとおり、私的整理ガイドラインによる私的整理を行う場合、申出の前から、相当入念な準備をしておくことが必要となります。この段階で、スポンサーを選定するという、いわゆるプレパッケージ型の私的整理も有り得ます。
 これらの過程において、財務デューデリジェンスを行い、法的整理を行った場合とのメリット・デメリットを検討し、法的整理手続による事業価値毀損がどの程度になるかと言った点、全対象債権者からガイドライン手続による再建計画に同意が得られる見込みがあるのかを見極めた上で、私的整理を選択した場合は、私的整理の申出を行うことになります。

私的整理の申出

 私的整理の申出は、主要債権者に対してなすものとされます。
 通常はメインバンクが主要債権者ということになりますが、大口債権者もケースによっては該当する場合があります。
 対象会社について私的整理ガイドラインの適格性が認められる場合は、私的整理の申出前に、主要債権者と協議して、具体的な準備を始めることになります。
 このような私的整理の準備は、対象会社から主要債権者に対して持ち込むだけではなく、メイン銀行である主要債権者から対象会社に対して働きかけて始まることもあります。
 具体的な準備としては、まず対象会社と主要債権者との間で、私的整理を行うことの基本合意を締結することになります。

 次に、私的整理ガイドラインによる私的整理については、原則として一時停止後2週間以内に第1回債権者会議、第1回催権者会議から3ヶ月以内に第2回債権者会議を行うと言った時間的制約があることからタイムスケジュールを決定する必要があります。
また私的整理ガイドラインによる再建計画により権利変更を受ける対象債権者の範囲をどうするかについても検討する必要があります。通常は、金融機関のみを対象債権者としますが、金融機関以外の大口債権者がある場合において、その協力を得なければ再生が困難な場合には、対象債権者に含めることについて検討が必要となります。
逆に、対象債権者の数を減らして同意を得やすくするために少額債権者については、対象から外すという選択肢もあり得ます。

 また担保により100%債権を保全している金融機関については、再生計画によって影響を受けないことから対象債権者には含まないものとして取り扱うことになりますが、期限の猶予といった支援を求める場合は、対象債権者に含めることもあり得ます。
更に、対象会社と訴訟中の金融機関についてどうするか、と言った問題もあります。これについては「訴訟中」であるとの事実をもって対象債権者から除外することはできませんが、この点は、再生計画について同意を得られる見込みがあるかという判断においても検討が必要になってくる点です。

私的整理の開始

 対象会社から私的整理の申出が主要債権者に対してなされ、対象会社と主要債権者の連名にて対象債権者に対して一時停止の通知が発送されることにより私的整理手続が開始します。通常、一時停止の通知はファクシミリにて送信され、直ちに対象債権者に対する面談の申し入れを行い、説明資料を持参して個別説明を行うことになります。
 その他、対象債権者以外の関係先(監督官庁、証券取引所、従業員・労働組合、取引先、マスコミ)に対しても適宜、情報を通知・開示していくことになります。
 なお第1回債権者会議において一時停止通知が追認されず、ガイドライン手続が不成立となる見込みが高い場合は、不成立と同時に、民事再生手続や会社更生手続といった法的整理の申立ができるよう準備しておき、事態の収拾を図らなければならないことになります。

私的整理ガイドラインに基づく私的整理手続

第1回債権者会議

 第1回債権者会議の主たる目的は、対象会社と主要債権者による一時停止の通知により開始されたガイドライン手続を継続するのか、再建計画案を拒否するのかについて、対象債権者において主体的に決定する点にあります。
 第1回債権者会議の議長は、通常、主要債権者から選任することになります。
 議事は、対象債権者からの質疑応答、専門家アドバイザーの選定、一時停止の追認、一時停止期間の延長、第2回債権者会議の日時場所の指定、その他必要な事項(DIPファイナンス、スポンサー選定方法等)の決定を全員一致で行うことになります。
 対象債権者に欠席者が出ると第1回債権者会議は成立しないことから、基本的には、私的整理を断念することになりますが、出席の見込みがある場合は、会日を延期して改めて出席を促すことも考えられます。
 議題に反対者・留保者が出た場合は、基本的に私的整理の続行を断念する必要がありますが、再考の余地がある場合は、第1回債権者会議を続行、延期することにより対処することも考えられます。

 第1回債権者会議後、今後の問い合わせ窓口は、専門家アドバイザーに一本化されるのが一般的です。
 専門家アドバイザーは、必要に応じて対象債権者全員に関係するもので、重要な事項について調査・検証を行い、必要が有れば再建計画の修正について意見することもあります。
 専門家アドバイザーは、提出された財務諸表の適正や、再建計画案の内容の相当性・実行可能性について調査し、調査報告書を作成の上、専門家アドバイザー説明会を開催することになります。
 専門家アドバイザー説明会後、第2回債権者会議までの間、対象会社は、対象債権者から再建計画案の同意の取り付けに奔走することになります。一時停止後に対象債権者が債権譲渡した場合、譲受人には私的整理の情報が少ないため、同意取得に手間取ることがあります。 

 なお第2回債権者会議において一部の対象債権者から再建計画案に対して不同意が表明されるとガイドライン手続は不成立となりますが、不成立が見込まれる場合は、第2回債権者会議の相当期間前に、裁判所に対し、事前相談を行っておき、速やかに、民事再生手続や会社更生手続といった法的整理手続の申立を行い、事態の収拾を図ることになります。

第2回債権者会議

 第2回債権者会議は、再建計画案に係る最終質疑とその同意・不同意の表明期限を決定することをその目的としています。
 もっとも実務上は、この第2回債権者会議において、再建計画案の同意書が各対象債権者から提出されることとなっており、これにより再建計画が成立することが多くなっています。
 欠席者が出た場合、同意書の提出が予定されていれば、第2回債権者会議の続行若しくは同意書提出期限の延長を決議することになります。反対で欠席したときは、ひとまず続行決議して対応することが多いかと思われます。

 第2回債権者会議の議事も、主要債権者から議長を選任して進められることになります。
 同意書の提出時期は、本来、第2回債権者会議で決議すべきところ、実際には、第2回債権者会議において、同意書が提出されています。ここでは一時停止期間中に提出されるべき点がポイントです。
 同意書を根拠に対象債権者の債権は変更されることになりますが、再建計画が成立しない場合は、効力が生じないことが黙示の前提とされているものと解されます。
 同意書は、統一した書式を用いますが、解除条件、要望事項など何らかの余事記載がなされた場合は、合理的意思解釈により効力について判断することになります。
 定められた期限までに同意書が提出されない場合、(1)ガイドライン手続不成立とする、(2)他の対象債権者のみで再建計画を成立させる、(3)特定調停手続等を利用して同意取得を目指す、という方法が考えられますが、(2)は結局ゴネ得を許すことになりかねず、(3)も相当期間を要する可能性もあり、対象債権者間の足並の乱れが生じ得るところです。

 ガイドライン手続が不成立となれば、速やかに法的整理手続を申し立てることとなりますが、ガイドライン手続中に実行されたDIPファイナンスにかかる債権を共益債権化できるかといった問題や従前のスポンサーの保護といった問題が残ることになります。

再建計画の成立

 再建計画が成立したときは、対象会社は、相当な方法により、再建計画の概要を公表することになります。また一定の要件を満たすガイドライン手続に基づく債務免除を受けた場合、平成17年度新税制(資産評価損益の計上や期限切れ欠損金の優先利用)の適用を受けることができますが、そのためには、全国銀行協会、社団法人日本経済団体連合会に、債権放棄等の概要を通知する必要があります。

再建計画の遂行

 対象会社は、再建計画を実行し、再建計画の定めに従い、債権者会議などで実施状況を報告することになります。
 もし再建計画の履行ができないときは、対象債権者全員の同意を得て再建計画を変更するか、法的整理手続に移行しなければならず、放置は許されないことになります。なお、対象債権者と個別に和解して新たに債務免除を受けることや期限の猶予を受けることも禁止はされていません。
 なお、再建計画変更の手続は、再建計画成立時の手続と同様の手続に則って行われるべきこととなります。

民事再生手続の流れは次のとおりです。

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管轄

 民事再生手続は、対象会社あるいはその債権者が、裁判所に対し、民事再生手続開始決定の申立を行うことにより開始します。民事再生手続は、原則として、対象会社の主たる営業所の所在地を管轄する裁判所に申し立てることになります(民再5条1項前段)。主たる営業所の所在地は、本店と必ずしも同一であるとは限りませんので注意が必要です。
 対象会社の親子会社、代表者についても民事再生手続を申し立てる場合は、対象会社と同一の裁判所に申し立てることになります。
 なお、大規模事件の管轄については、専門的・集中的に処理する要請から特則が設けられており、再生債権者が500名を超える場合は管轄裁判所の上級庁である高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所に対して、1000名を超える場合は、東京地方裁判所、大阪地方裁判所に対して申立することも出来ます。

申立

 民事再生手続の申立にあたっては、(1)経営陣に重大な不正行為がないか、(2)破産手続による清算配当見込額を上回る弁済ができる見込みがあるか、(3)粉飾決算の有無、(4)共益債権や優先債権、特に公租公課の有無及び金額、(5)当面の資金繰りの確保、(6)主要債権者の再生計画への同意の見込み等を調査する必要があります。
 特に(5)資金繰りについては、日計表を作成するなどしてある程度の目処を立てておかなければ、資金繰りが続かず民事再生手続は廃止され、破産手続移行ということになりかねないので十分に注意が必要です。
 また(6)大口債権者が再生計画に反対している場合は、再生計画案が決議されず、民事再生手続が成功しない可能性が高くなります。従って、民事再生手続の申立にあたっては、大口債権者に事前に申立の趣旨・概要・再生計画の骨子等を説明し、意向を確認しておくことが重要になります。
 民事再生手続の申立は、株式会社のみならず自然人・公益法人を含む全ての法人が可能です。法人が申立をする場合、対象法人の意思決定機関(取締役会等)の決議をもってなされることになり、個々の役員や株主には申立権は認められていません。
 申立にあたっては、破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあること或いは事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないことについて、裁判所に対し、疎明する必要があります(民再21条1項)。
 破産手続開始の原因となる事実とは、支払不能(破産15条1項)、債務超過(破産16条)であり、事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済できないとは、重要な事業用資産を売却しなければ債務の支払いが困難である、といったような状況を意味します。

中止命令,包括禁止命令,保全処分命令,監督命令

 民事再生手続の開始決定が出ると、破産手続、特別清算手続、再生債務者の財産に対する強制執行等は当然に中止され、効力を失うことになります(民再39条)。もっとも、民事再生手続の申立がなされただけの段階では、このような効力は生じませんので、これにより、対象会社の資産の散逸を招くことになれば、結果として、再生手続の目的が達成できなくなる事態も生じ得ることとなります。
そこで裁判所は、必要と認められる場合、開始決定前であっても、利害関係人の申立または職権により、これら強制執行等の手続について、個別に中止命令を発令することができると定められています(民再26条1項)。
 またこのような個別的な中止命令によっては、再生手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認められるような特別な事情があれば、裁判所は、利害関係人の申立または職権により、包括的に強制執行等の手続を中止することができることになっています(民再27条1項)。
 もっともこのような中止命令、包括禁止命令の対象は、再生債権に基づく手続のみであり、滞納処分に基づく差押等は対象とはなりません。
 一方、民事再生手続を申し立てた段階では、申立会社に未だ再生債権者に対する弁済や財産の処分は可能な状況であるところ、これらを無制限に許容すると、偏頗弁済、財産の不当な流出等を招くおそれもあることから、裁判所は、利害関係人の申立または職権により、再生債務者の財産に対し、仮差押、仮処分その他必要な保全処分を命じることができることとされています(民再30条1項)。
 なお、裁判所は、必要あると認める場合、利害関係人の申立または職権により、監督委員を選任することができます(民再54条1項)。監督委員は、再生手続の過程を通じて、主要債権者の意向を把握しながら、再生債務者の財務状況について事案に応じた調査を行うと共に、債権者が再生計画案の決議をする上で必要な情報について、適切に開示・説明するよう再生債務者を促したり、再生計画案の内容についても意見書を提出する他、必要な監督を行うことになります。法人の民事再生手続については、原則として、監督委員が選任されることになります。

開始決定

 民事再生手続の申立がなされ、申立の棄却事由がなければ、通常1週間程度で、民事再生手続が開始することになります。
(1)民事再生手続の費用の予納がない、(2)係属中の他の手続(破産、特別清算)によることが債権者の一般の利益に適合する、(3)再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らか、(4)不当な目的により、或いは不誠実な再生手続開始の申立てがされた、といった場合、民事再生手続の申立は棄却されます(民再25条)。この棄却事由の調査は監督委員が行い、裁判所に報告します。
 民事再生手続が開始後における手続の取下は許されません。
 開始決定にあたり、法人である再生債務者の財産の管理・処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業継続のために特に必要のあるときは、例外的ですが、利害関係人の申立または職権により、管財人が選任されることがあります。
この場合、再生手続開始決定までの間、保全管理人の選任が命じられることが多くあります(79条1項)。

債権届出

開始決定がなされると、開始決定通知が再生債権者に対してなされ、併せて債権届出の催告がなされます。
再生債権者は、債権届出書を、届出期間(開始決定から6週間程度)までに提出(民再94条、99条?101条)しなければなりません。
届け出られた債権については、再生債務者において認否(民再101条)することになりますが、届出債権者は、一般調査期間内は書面にて異議を述べることができます(民再102条1項)。異議がなかった債権については確定(民再104条)します。
調査結果に異議がなされた場合、当該再生債権者は、調査期間の末日から1ヶ月以内に再生債務者並びに他の再生債権者を相手に査定の裁判を申し立てることができます(105条)。査定の裁判では裁判所が決定により債権の存否・額を定めますが、これに不服の場合は、査定の裁判の送達を受けた日から1ヶ月以内に、異議の訴えを提起できます(106条)。
異議等のある債権について、訴訟が係属していた場合は、中断中の訴訟について異議者等全員を相手方として受継手続の申立を行い、解決することになります(民再107条)。
担保権については別除権として扱われるため、届出等は不要ですが、一定の要件の下、担保権実行手続の中止命令が認められています(民再31条)。
なお共益費用、再生手続開始後の経費、監督委員の報酬等の共益債権については、随時弁済されることになります(民再121条)。
また例えば、申立後にDIPファイナンスを受けた場合等、民事再生手続申立後開始決定までの間の事業継続により生じた請求権については、裁判所の許可(監督委員の承認)により共益債権化することが認められています(民再120条1項)。

財産評定書の提出(開始決定から1ヶ月)

再生債務者の一切の財産については、民事再生手続開始時の価額を評定し、これに基づいて財産目録及び貸借対照表が作成されることになります(民再124条)。
評定は、原則として財産を処分する場合における、いわゆる「処分価格」により評価します。民事再生手続における弁済総額は、破産した場合における配当額を下回ることは許されず、財産評定は、再生債権者に対し、清算価値を保障する機能を有します。

再生計画案の提出(開始決定から3ヶ月)

 再生計画とは、再生債権者の権利の全部又は一部を変更する条項その他民事再生法154条に規定する条項を定めた計画になります(民再2条3号)。
 再生計画は、通常は再生債務者が、管財人が選任されている場合は管財人が、裁判所が定める期間内に、裁判所に提出することになります(民再163条)。

 再生計画には、

(1)全部または一部の再生債権者の権利の変更(民再154条1項3号)
(2)共益債権及び一般優先債権の弁済(民再154条2項)
(3)知れている開始後債権があるときは、その内容(民再158条)
(4)未確定の再生債権に関する条項(民再159条)
(5)別除権不足額に対する的確措置条項(民再160条1項)

を記載しなければなりません。

 また再生計画による権利変更の内容は、原則として再生債権者間で平等でなければなりません(民再156条)。但し、不利益を受ける再生債権者の同意のある場合や、少額再生債権、手続開始後の利息等請求権については例外的に別段の取扱も認められます。
 なお、弁済期間は特段の事情のある場合を除いて、再生計画認可確定から10年以内で定める必要があります(民再155条3項)。
その他、再生計画では次のような事項を定めることができます。

事業譲渡に関する条項

 民事再生手続においては、再生計画外の事業譲渡も可能ですが、再生計画内で事業譲渡を行うことも可能と解されています。この場合、株主総会の決議に代えて、裁判所の代替許可によっても事業譲渡可能です(民再43条)。

株式の取得に関する条項(民再154条3項)

 再生債務者が債務超過の場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、自己株式を再生計画により取得することができます。

株式の併合に関する条項(民再154条3項)

 再生債務者が債務超過の場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、再生計画により株式を併合することができます。

資本金の額の減少に関する条項(民再154条3項)

 再生債務者が債務超過の場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、資本金の額を再生計画により減少することができます。

再生債務者が発行することができる株式の総数についての定款変更に関する条項
(民再154条3項)
募集株式を引き受ける者の募集に関する条項(民再154条4項)

 再生債務者が非公開会社であり、債務超過の場合で、再生債務者の事業の継続に欠くことができないと認められる場合、予め裁判所の許可(民再166条1項、2項)を得て、資本金の額を再生計画により減少することができます。
 これによって、再生計画により第三者割当増資を行い、スポンサーからエクイティの形式で資金を受け入れることが可能となります。

根抵当権の極度額を超える部分の仮払に関する条項(民再160条2項)

再生計画案の決議

 裁判所は、提出された再生計画案について、決議に付する旨決定をします(民再169条)。この際、決議権行使の方法について、債権者集会期日で行使する方法(集会型)か書面等投票による方法(書面型)、両者を併用する方法(併用型)を定めることになります。  決議は、議決権行使をした議決権者の過半数の同意(頭数要件)と、議決権者の議決権の総額の1/2以上の議決権を有する者の同意(議決権行使額要件)の両方を満たすことにより可決されます(民再172条の3第1項)。

再生計画案の認可

 再生計画案が決議された場合、裁判所は、不認可事由の存否を審理の上、不認可事由の認められない場合は、再生計画認可決定をすることになります(民再174条1項、2項)。
 不認可事由としては、(1)再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき、(2)再生計画が遂行される見込みがないとき、(3)再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき、(4)再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するときがそれぞれ挙げられます(民再174条2項)。
(1)再生計画が法律の規定に反しているとは、例えば弁済条件が平等性を欠いているような場合が挙げられます。
(2)再生計画が遂行される見込みがないとは、文字通り再生計画に実現可能性がない場合を言います。
(3)決議が不正な方法によったとは、贈収賄や再生債権者に対し、特別の供与があった場合などが典型です。
(4)再生債権者の一般の利益に反する典型は、再生計画に定められた弁済率が、破産手続の配当率を下回るような、清算価値が保障されていないような場合です。
再生計画認可の決定が確定すれば、再生債務者は、再生計画に定められ、また民事再生法により認められた権利を除き、全ての再生債権について原則として免責されることになります(民再178条)。

再生計画の履行

再生計画認可決定が確定したときは、再生債務者は、速やかに再生計画を履行していくことになります。
 監督委員が選任されている事件では、再生計画が遂行されたとき、または再生計画認可の決定が確定した後3年を経過したときに、裁判所より終結決定がなされることになります(民再188条)。
 再生計画が履行されない場合は、再生計画の取消(民再189条)、再生計画認可後の手続廃止(民再194条)等が行われることになります。

会社更生手続の流れは次のとおりです。


事前相談

 更生手続は、申立により開始しますが、実務上は、申立による混乱の回避や事業の劣化を最低限に食い止めるため、申立の2週間程前から、裁判所と申立権者の間で、事前相談が行われるのが通例です。事前相談においては、申立の予定を確認すると供に、保全管理人の人選、保全管理人団の規模、保全処分の内容といった申立後の保全処分の準備に関する事項を打ち合わせ、また申立を維持するために必要な申立当初の資金繰りの状況について必要な確認も行うことになります。

申立

 更生手続を利用できるのは株式会社だけです。(1)破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれのある場合、又は(2)弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれが有る場合に該当する事実があるときには、申立権者は、会社更生手続の申立を行うことができます(会社更生17条1項)。
 (1)の場合における更生手続については、対象会社、当該株式会社の資本の10分の1以上にあたる債権を有する債権者(会社更生17条2項1号)、当該株式会社の総株主の議決権の10分の1以上を有する株主(会社更生17条2項2号)、外国管財人(会社更生244条1項)において申し立てることが可能です。
 一方、(2)の場合において更生手続を申し立てることができるのは対象会社だけです。
 会社更生手続は、対象会社の主たる営業所の所在地、本店所在地を管轄する地方裁判所の他、東京地方裁判所、大阪地方裁判所に申し立てることが可能です。
 会社更生手続という強力な法的手続を利用して大規模企業の再建を適正・迅速に進めるには、更生手続について知識・ノウハウの蓄積があり、大規模事件に対応できる体制の整った東京地方裁判所、大阪地方裁判所が適しているとの考えから、従来、申立直前に本店を東京あるいは大阪に移転して、東京地方裁判所或いは大阪地方裁判所にて申立をするケースが多く見られました。そこで、平成14年の会社更生法改正の際、端的に、東京地方裁判所、大阪地方裁判所への申立が認められることとなりました。

保全処分・保全管理命令

 対象会社から会社更生手続を申し立てる場合、東京地方裁判所では、事前相談のあることを前提として、申立と同時に弁済禁止等必要な保全処分(会社更生28条)の決定を行い、また保全管理命令(会社更生30条)の申立があれば、即日発令されることになります。
 その他、他の強制執行手続等の中止命令(会社更生24条)や包括禁止命令(会社更生25条)がある点も、民事再生手続と同様です。

更生手続開始決定(申立から1週間から1ヶ月程度)

 会社更生手続の申立がなされ、更生手続開始の原因となる事実(会社更生17条1項)があると認められるとともに、申立棄却事由が存しないと判断される場合、裁判所は、更生手続開始決定をすることになります(会社更生41条1項)。
 会社更生手続の申立棄却事由は、更生手続の費用の予納がない、裁判所に破産手続、再生手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合する、事業の継続を内容とする更生計画案の作成若しくは可決の見込み又は事業の継続を内容とする更生計画の認可の見込みがないことが明らか、不当な目的で更生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでない、といったものになります。

更生会社の財産調査(財産評定)・確保(申立から7ヶ月程度)

 管財人は、更生会社の財産を調査し、更生手続開始後、更生会社に属する一切の財産について、その価額(時価)を評定して、その財産評定結果に基づき、更生手続開始時における貸借対照表及び財産目録を作成することになります(会社更生83条)。
 これにより、更生管財人は、更生会社の財産状況とその清算価値を正確に把握することができるようになります。
 この財産評定の結果に基づき、更生管財人は、更生担保権者と交渉し、更生担保権について認否を行う他、財産評定の結果は、清算価値保障の原則(民事再生手続と異なり明文はありません。)との関係で、更生計画における更生債権者等に対する弁済率の決定する際の要素にもなります。
 また、更生管財人は、更生会社に詐害行為や偏頗行為が有る場合は、否認権を行使したり、更生会社に損害を与えた役員等に対し損害賠償請求することにより、更生会社の財産を確保することも期待されます(会社更生99条以下)。

債権届出・調査・確定(申立から11ヶ月程度)

 更生手続が開始すると、対象会社の債務の種類と額を確定させるため、債権の届出・調査・確定の手続がなされることになります。更生債権並びに更生担保権については、更生手続が開始すると、更生計画の定めるところによらなければ弁済を受けることはできなくなります(会社更生47条1項)。
 そのため、更生手続に参加しようという更生債権者等は、債権届出期間内に権利の届出をしなければならないことになります(会社更生138条)。
届出られた債権については、裁判所書記官において、更生債権者表及び更生担保権者表を作成(会社更生144条)し、更生管財人において、認否を行い、認否書を裁判所に提出することになります(会社更生146条)。

 更生管財人が認否書で認めた更生債権等については、届出更生債権者等及び株主等から異議がなければ確定します(会社更生150条1項)。
 一般調査期間中、更生管財人は、認否書等を更生債権者等又は株主等が更生会社の主たる営業所において閲覧できる措置を取る必要があり、実務上は、管財人より届出更生債権者等に対し、認否結果が通知されています。
 認否書の認否内容に異議のある更生債権者等は、書面で異議を述べることができます(会社更生147条1項・2項)。
 更生管財人が認め、または更生債権者等から異議が述べられた更生債権等については、当該更生債権者等において異議者全員を相手方として裁判所に対し査定の申立(会社更生151条)を行い、その裁判に不服のある者は、裁判の送達を受けた日から1月の不変期間内に、更生債権等査定異議の訴えを提起することができます(会社更生152条1項)。

 更生担保権については、被担保債権額と担保目的物の価額によってその存否・内容が定まりますが、被担保債権額そのものについての異議ではなく、目的物の価額について異議を述べた場合は、担保目的物の価額決定手続(会社更生153条から155条)によって、更生担保目的物の価額を決定することになります。

更生計画案の提出・決議・認可

 更生会社の負債、資産の確定等の手続を踏まえ、更生管財人は、裁判所の定める期間内に更生計画案を作成・提出することになります(会社更生184条)。
 更生計画で定めるべき内容は、

(1)全部又は一部の更生債権者等又は株主の権利の変更
(2)更生会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人及び清算人
(3)共益債権の弁済
(4)債務の弁済資金の調達方法
(5)更生計画において予想された額を超える収益金の使途>
(6)続行された強制執行手続の配当金または見込額及び使途、担保権消滅請求制度により裁判所に納付された金銭の額または見込額及び使途
(7)知れている開始後債権があるときは、その内容

であり、法で定められています(会社更生167条)。
 また更生計画は、適法で、公正衡平かつ遂行可能でなければなりません(会社更生168条、189条1項3号、199条2項)。
 更生計画の権利変更は、通常、更生債権等の一部減免と残額の履行期限の猶予となりますが、弁済期限の猶予は15年を超えることはできません(会社更生168条5項)。
 更生計画案が提出されると、裁判所は、これを更生計画案決議のための関係人集会による決議に付するか、書面等投票による決議に付するか、それとも議決権者に対し、いずれの方法によるかを選択させるかを決めることとなります(会社更生189条)。
 東京地方裁判所の一般的な運用では、開始決定の日から10ヶ月以内に、更生計画案の提出を求めることとなっています。
 更生計画案の決議は、権利の種類によって組み分けし、それぞれの組毎に分かれて行うことになります(会社更生196条1項)。
 実際の更生会社は多くの場合債務超過ですので、株主には議決権は与えられず、更生債権者と更生担保権者についても、細かな組み分けは行われておらず、更生債権者と更生担保権者の二つの組に分かれて決議が行われるのが通例です。
 組毎の可決要件は、更生債権者の組は、議決権を行使できる更生債権者の議決権の総額の2分の1を超える議決権を有する者の同意です。これに対し、更生担保権者の組においては、更生担保権の期限の猶予を定める更生計画案については、議決権を行使できる更生担保権者の議決権の総額の3分の2以上、更生担保権の減免を定める更生計画案については、議決権の総額の4分の3以上、更生会社の事業の全部を廃止する更生計画案については、議決権の総額の10分の9以上の同意が必要となります(会社更生196条5項)。

 可決された更生計画案は、

(1)更生手続又は更生計画が法令及び最高裁判所規則の規定に適合するものである
(2)更生計画の内容が公正かつ衡平である
(3)更生計画が遂行可能である
(4)更生計画の決議が誠実かつ公正な方法でされた等

の要件を満たせば、裁判所によって認可されることになります(会社更生199条)。

更生計画の遂行

 更生計画が認可されると、更生管財人は、すみやかに更生計画の遂行または更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分の監督を開始することになります(会社更生209条1項)。
 更生計画の定めまたは裁判所の決定により更生管財人の更生会社の事業の経営並びに財産の管理・処分権限が排除されれば、取締役会の権限が回復するため、管財人はその監督を行うことになります(会社更生72条4項)が、実際は、更生管財人が更生計画の遂行にあたることが通例です。
 更生計画の遂行としては、まず役員の変更、資本の変更がなされます。債務超過会社の場合は通常、100%減資が行われます。その後、更生計画に従い、更生債権者等に対する弁済が行われることになります。

更生計画の終結

 更生手続は、更生会社の事業の維持更生が達成された場合は、その目的を終え、裁判所の更生手続終結決定により終結します。


(1)更正計画が遂行された場合
(2)更生計画の定めによって認められた金銭債権の総額の3分の2以上の額の弁済がされた時において、当該更生計画に不履行が生じていない場合
(3)更生計画が遂行されることが確実であると認められる場合

には、裁判所は、終結決定を行うことになります(会社更生239条1項)。
終結決定により、更生管財人の権限は消滅し、ようやく更生会社は普通の会社に戻ることになるのです。